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108.WPの安全性

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108.Wordpressの安全性 「別に問題はないよね」 A子はWordpressでサイトを作成していたが、セキュリティとは無縁だと考えていた ブログを書くだけなら、そんなに問題はないと思っていたのだ ところがアクセスが増えてくると、少しずつ不安も増してきた 「もし、サイトが表示されなくなったりしたら...」 表示されない時間が生じた場合、アクセスや収益が上がるほど、その損害は大きくなるのは明白だった それに加え、A子は最近、会員限定の記事もはじめていたため、セキュリティについては真剣に考えざるを得なくなっていた 「でも、何をすればいいのかしら」 A子は調べた結果、まずは最低限の事を行うことにした それは、テーマとプラグインを厳選していくこと といっても、そこまでマイナーでなはく、更新をしっかりとしているものに限るというシンプルな基準にした もちろん、インストールしたテーマとプラグインの更新はWordpress本体と同様に、チェックを怠らずマメに更新していくことも行っていった 他にも、各ファイルへのアクセス権限や、ユーザー専用のURL、パスワードの強化、スパム対策にreCAPTCHAの導入なども行った しかしながらキリがなかいといってよかった A子は、無料で行うには限界があることを理解しなければならなかった 「クラウドサービスは高いからWordpressを選んだのに...」 Wordpressは無料だというイメージはことごとく覆されたのだった 補足 Wordpressではやることが山積みだ。日々増えていく。 もちろん、適当に管理し運営していくだけなら話は別だが.. あなたはWordpressのセキュリティを無視できますか?

107.WP3つの問題

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107.Wordpress3つの問題 A子はWordpressについて悩んでいた 「う~ん、どうすればいいのかしら...」 それは便利なテーマやプラグインとセキュリティの面だった A子はWordpressでセキュリティは重要な問題であり、大切な顧客情報など扱うのであればなおさらだということを知っていた Wordpressは便利なテーマやプラグインが多いからといって、何でもかんでも入れるわけにはいかない A子は、様々な問題が生じる以前にセキュリティの問題が生じることを懸念していた 「そのためには、最低限、随時更新されているものでなければならないわ」 そこでA子が便利で尚且つ随時更新されているテーマとプラグインを探そうとすると、ほぼ間違いなく有料のテーマやプラグインになってしまうのだった 無料で出ているものは、ほぼ機能が足りないものが多かった A子は納得せざるをえなかった 「開発費が必要なのだからしょうがないか」 そう思っても、いちいちテーマとプラグインを購入していたのではらちが明かなかった 殆どのものは返金制度がついているとはいえ、気に入らないからといってそんなことをしていては、きりがなくなってしまう A子は考えた その結果、CPLを利用して試してみることにしたのだった GPLは格安でテーマとプラグインが入手できるがサポートと更新がついていない テーマとプラグインの販売者は、サポートと自動更新でお金を得ているに過ぎない 「試すだけなら、GPLでいいか」 A子はGPLで試して気に入った後、本格的に使用する際に、購入することにした ところがA子に新たな問題が浮上した それはGPLのテーマとプラグインのセキュリティの問題だった 「これは慎重に探さないと大変なことになってしまうわ」 A子が慎重にGPLサイトを探していると、それ以前のサイトが多かった それは、更新頻度が遅いサイトだ 更新しないGPLはセキュリティ上、とても使えたものではなかった そこでA子は検討した挙げ句、GPL

106.WPの不具合

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106.WPの不具合 A 子はWordpressでサイトを作っていた A子は簡単にサイトを作れ、何でも出来るWordpressに大きな可能性を感じていたのだった 「これを使えばバッチリ!これで稼げば生活も助かるわ」 ところがA子の幻想は直ぐに崩れ落ちることになった 「何でもできるとは、無限にやることが増えていく」ということだったのだ しかもWordpressは凝ったものを作ろうとすればするほど、直ぐに不具合が出てしまう A子は思った。 「これじゃいつまで経っても自分のやりたいことができない」 そこでA子は、不具合を専門家に解決してもらうことにしたのだった 専門家に依頼すると、その不具合という問題は、あっけないほど直ぐに解消された A子は流石だと感心した 「助かった。自分でやってたらどのくらい時間をつぶしたかわからなかったわ」 ところが、少し進めていくとまた不具合が起きたのだった A子は不具合が生じる度に、1回3000円ほどの料金を支払っていた 「このままじゃ、いつまで経っても赤字だわ」 A子は時間がかかっても、自分自身で行うことにしたのだった するとその甲斐あって、今では殆どの不具合を解消することができるようになっていた そこでA子は、それまで得たスキルを活かして、今度は自分のように困っていた人を助けてやることにしたのだった あっという間に解決してやると、顧客からは感謝された 以前の自分がそうだったから、A子はその気持を痛いほど理解できた しかしA子には、気にかかることがあった それは、このままだとA子のような人が増えてしまうのではないのだろうかということだった それはライバルが増えることを懸念したのではなく、本来のWordpressで作成する目的が違う方向にいってしまうことと、そして手間を惜み他に頼むと赤字になってしまうジレンマは解決していないことだった そこでA子はできる限り自分自身で解決できるよう、自分でやってきた不具合の解消法をまとめることにしたのだった まずはバックアッ

105.WPで稼ぐ

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105.WPで稼ぐ Aは Wordpress を使ってサイトを作り稼ぐことを考えていた しかし知識を得て経験を積むほどに、やるべきことが日に日に増えていき、その割には稼ぎが少ないといった具合に、なかなか思うようにいかなかった そんなある日のこと Aはテーマやプラグインを販売する側が儲かるのではないかと思いついた 思いついたまでは良かったが、Aにはプログラムを開発するような知識はなかったし、学んでみようとするまでの興味もわかなかった そこでAは外注をすることにした 世界には格安で望むテーマやプラグインを開発してくれるプロが数多くいた Aはさっそく開発費として投資することにした 苦労の甲斐があり、出来上がったテーマとプラグインは、そこそこ販売できるようになっていた ところが1つ問題が生じた それは、Wordpressの世界は変化のスピードも早く、競合も多かった その上、ハッカーに狙われやすいため、新たな機能やセキュリティ面を含めアップデートを頻繁に行っていく必要があった しかもアップデートのないものは、そもそも購入されなくなっていくため尚更だった Aは新しい機能の追加含め、不具合が生じる度その都度エンジニアへ依頼しなければならなかったため、コストが重くのしかかってきた 結局、Aは赤字になりアップデートを断念せざるを得なくなってしまったのだった.. 補足 胴元が儲かるとはWordpressでもいえることなのだろうか? Wordpress自体は無料であるため、ユーザーもはじめやすく、なおかつテーマやプラグインの開発者がこぞって宣伝してくれている ユーザーにとってもオプションとして、豊富な機能が増えていくのでとても便利なCMSだといえるだろう 使いこなすほど本来の目的から離れていくという矛盾がなければの話だが.. WPX-WordpressX-あらゆる種類のサイトを構築できる秘策を公開

104.SEO

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104.SEO Aは20年以上SEOを検証してきた 様々な検証を繰り返してている中で良いことも悪いこともあった 多くのページを上位表示させたこともあったし 一瞬で消滅させる苦い経験も何度も味わってきた Aの経験から検索ロボットを攻略しようとしても そのこの攻略内容が優秀であるほど、直ぐに対策されることを実感していた 時間をかけて攻略し、ようやく効果が出せたと思うと、アルゴリズムの変更で一気に逆転してしまう と思えば、全く攻略していない記事がいつまでも上位表示されていることもあった 「これではきりがない」 攻略と対策が繰り返されるきりがない状況にAは疲れ果てていた それでもAは諦めきれず対策を検証し続けてきた その結果、遂にAはアルゴリズムの変動に影響されにくい、もっとも確率が高い方法を見つけることができた 「なるほど。そういうことか」 それは「体験を元に作成する」ということだった それからというもの、Aは体験をお金に変えるように、次々と検索の上位表示を達成していった ところが、確かに上位表示はされ、変動の影響は受けにくく安定するようになったといえ、そこまで収益につながるものではなかった 例えば、コンビニで買い物をした経験はアクセス数も少なく、トレンドにのって1時期アクセスが上がったとしても、長くても数十秒で訪問者は去ってしまうのだ Aはボランティアでやっていたわけではないので、これではいけないと方向性を変えることにした いつしかAは、収益につながるような体験ばかりを求めるようになっていのだった.. 補足 誰しも無料でアクセスを集めたくなる。と同時にどこかで収益を求めてブログを含めたサイトを運営している。 とはいえ、全員が上位表示されてしまえばどうなるだろう。 特に収益目的を主体としているサイトが全て上位表示されるようになる状態。 そうなれば広告は殆どの人が出さなくなってしまうのではないだろうか

103.多様性

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103.多様性 A は創り手として、次は何を創ろうか考えていた 幸い今の時代、インターネットを探せばネタは腐る程あったため、不自由しなかった 既に売れている作家からヒントを得るのもいいが、売れてない作家からヒントを得ることもあった。Aは既に実績があり環境が整っていたため、先に出せた。 その他、人が集まっているサイトに行くだけで、どんな言葉を使い、何が流行っているのかが直ぐにわかるため、どんどん積極的に取り込んでいった。 「楽勝だな」 そんな日常をおくっていたため、Aは頭の回転が早く、売れるモノ作りをして認められる存在になっていたのだった。 そんなある日のこと、あるキッカケからAはそれまで目をそらしてきた現実を見なくてはならなくなった。 それは独創性というものだった。 Aは、ただ面白ければいい、ただ売れればいい、ただウケがよければいい、感情を刺激できればいいという基準でこれまできたため、そこに人間という相手がいることをすっかり忘れていたのだ。 Aにとって、全ては情報としか見えていなかったのだ。 Aには既に、命の温もりが感じられなくなっていた。 そこでAは、これまでの自分考えを思い出していた。 今の時代、個性が重視され、多様性が渦巻いている。 「おれは一生安泰だ」 ネタ作りには一生困らない、しかもそれで注目を集められると安心仕切っきっていた しかしその時のAはまだ、そのどれにも命が吹き込まれていなかったことに気がついていなかった。 表面的な感情を刺激するだけの言葉を並べた薄っぺらい作品ばかりだった。 以前のAは、思っていた 「アホなやつらの時間を奪うのは簡単なことだ。それで数字で結果を出せば問題ないだろ」 Aの作品は、ただ続きが気になるようにだけ作り、内容の質は二の次になっていた。 それを与えられる側は「何か騙されたような気がする」と感じながらも、それを認めたくないため、深く考えず次の作品を求める繰り返しをしていた。 ただ気に入らない時は、思いきり攻撃してストレスを発散していた。 それこそがAの目論見通りだった その瞬間を生きることを、その時だけよければいい、その時だけつなぎとめればいいという意味に履き違えて受け取っていたのだった。 いつの間にか、読者のご機嫌ばかり伺っていれた。 その結果、与えられた側はそれに気づき、Aを徹底的に攻撃したのだった 辛酸を嘗めたAは、命が

102.千年紀

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102.千年紀 A 子が済む世界。 そこは、お金が必要のない世界だった。 生活必需品はもちろんの事、娯楽を含む必要なものが、必要なだけ手に入るようになっていた。 手に入れる条件は一つだけとなる。 それは自分の生活情報と思考パターンを提供するだけだった。 それは、更に快適な生活を提供するためのデータとして使われるし、コンピューターが処理するだけなので、プライバシーが悪用される心配はなかった。 加えて、一人一人に合わせて快適な生活が提供されているため、犯罪も激減していた。 お金が存在しないので、人は人の顔色をうかがう必要もなくなり、自分自身や大切な人や生き物、物をもっと楽しく快適にするため、楽しみながら勤しんでいた。 A子は小説を書いていたが、それはお金のためでも有名になるためでもなく、ただ大切な人に楽しんでもらうためだった。それが他の人にも気に入られ喜ばれていた。 喜んでもらえると、そのためのネタを考える苦労もすっと消え、喜びに変わった。 A子は思った。 「さて、今日は何で悩もうかしら」 そこでは、何を悩むのかを選択する自由もあった。 超現実的なゲームや映画も無償で配給されていたため、スリルや感動、笑い、恋愛など事欠かなかった。 それは観るだけでなく、全身で感じることが出来るため、自由に経験し、満喫することもできた。 A子はドキュメンタリーも好きだったので観て感じる機会も多かった。 「ふ~ん。一昔前は、こんなに大変だったんだ。 例えば..信じていた友人が名前を伏せて心無いことを書く場所もあったんだ。これじゃ誰も信じられなくなっても不思議じゃないわね..」と感慨深そうに感じながら経験していた。 そんなある日の事、A子は既に二百歳を迎えようとしていた。 A子は自分の人生を振り返り、言った。 「考えてみたら、あっという間だったわね。そろそろ、いつ死ぬか考えなきゃね」 そこでは、いつ死ぬかも自由に選択できたのだった。 何せ人生に飽きたら、いつでも生まれ変わり0から始められる仕組みも出来ていたのだから。 補足 これまでの価値観で物事を見ていると、ただ繰り返しが続くだけだといえるだろう。 世界中の情報を集めているグーグルの検索がどんなに進歩したとしても、人がこれまで悩んだ事がない答えは出てこない。 所詮は過去の人々の情報を集めているに過ぎないからだ。 今はまだ、人々を利用しシステ

101.愛3

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101-愛3 A 子は、人を痛めつけるのが仕事だった。 それも隠れてやるのではなく、大勢の前で、派手に痛めつけるほど報酬が増えた。 それだけでなかった。 A子は、痛めつけられる必要もあった。 そして、それにはテクニックも必要だった。 痛めつける時には、出来るだけド派手に、かつ後遺症などが残らないようにしなければならない。 痛めつけられる時には、出来るだけ全てを受け、同じく後に残らないようにしなければならなかった。 A子は、この仕事が心の底から好きだった。 派手な暴力の応酬をしているように見えて、その中身は愛で溢れていたからだ。 痛めつける方も、痛めつけられる方も、優しさで満ち溢れている。 それは、時に悪ぶったキャラを演じなければならない時でさえも同じだった。 そんなA子が、悲しくなる瞬間があった。 それは見た目だけで判断する、心無い暴言だった。 それでもA子は「いつか分かってもらえる」と信じながら、大好きなこの仕事を身体が続く限りやろうと決めていた。 その職業の名は「プロレスラー」 補足 人には誰しも様々な2面性がある。 その1つに、騙されたくないから疑いを持ち裏を見るという側面。 それと同時に、深く考えずに表の印象だけで判断しようとする側面も持ち合わせている。 本質を見抜く目とは、裏を暴いて正義感を振りかざすということなのだろうか? それともしっかりと目に映らないバックグラウンドまで見て見極めるということなのだろうか? もしかすると、これは同じことなのかもしれない。 本質を見ようとする心が偏見に満ちていなければの話だが..

100.恐怖

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100.恐怖 A 男は、ある発見をした。 それは「見かけ、根拠、証拠」だけで、殆どの人が信じてしまうということだった。 あえて調べるのが面倒なものだけを扱い、偏ったエビデンスを数多く提示するだけで、いとも容易く信じ込んでしまう。 A男は、この方法を使うことで、数多くの信者を集めることができた。 ところがそんなある日の事、ある有名な女優とのスキャンダルがきっかけとなり、全ての地位と名誉を失うハメになってしまった。 A男は、思った。 「もぅ、何も失うものはない」 A男は自暴自棄になり、とんでもない事を考えていた。 「いっその事、派手に殺人でもやらかして世間を騒がせてやろう」 そこでA男は、金を持っていることをアピールすることで、信頼を得ている大金持ちの人物をターゲットにすることに決めたのだった。 そしてA男は時間をかけ綿密に計画を練り、スキを狙い殺人を成功させることができた。 その後直ぐ、捕まる前に殺した相手の金を、生活が困窮している子供を支援している団体に匿名で寄付したのだった。 そして、A男は捕まり死刑になった。 A男に悔いはなかった。 と、このような事をA男は常に考えていた。 失うものはない人間は恐ろしい事を承知していたため、狙われても大丈夫なよう常に警戒を怠らなかった。 失う方が、遥かに怖かったからだ。 A男は、金持ちになればなるほど、更に大きな金を求めた。 念には念を入れ、金の無い者たちに定期的に少しずつ恵んでやることで、リスクを回避するように努めていた。 税金もできるだけ払いたくし、同時に狙われないようにするため、海外への移住も行う段取りになっている。 そして同時にA男は、万が一失ってしまった場合も、どうするべきか決めていた。 A男は思った。 「どちらにしても、成功するだろう」 補足 失うものは何もない人間VS失う事が怖い人間では、どちらに勝機があるのだろうか? 共通点としては「人も弱いものを狙う本能がある」といった点なのかもしれない。 信者を集める目的として巧みに隠されない限り..

99.詐欺

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99.詐欺 A は「金持ちになりたい」という強い思いを抱いていた。 日々、何か「良い方法はないか?」と探し求めていたある日の事。 「100%億万長者になる確実な方法」という教材を見かけた。 Aは「まさかそんな事があるはずがない」と思いつつも「証拠」というものが並んでいたのをみて、思わず飛びつくように購入してしまった。 早速中身を読んでみたところ、なんとそこには「宝くじを買い続けること」とだけ書いてあったのだ。 問い合わせたところ「嘘ではありません。当社のアドバイスに従い、購入を続けた方の中には、当選された人もおられます」と返ってきた。 弁護士に相談してみると「購入者の数が多い分、中には当たった人もいるのでしょう。情報も送られ続けてきており、連絡もとれるので返金は難しいでしょう」と言われたのだった。 Aは自分のバカさかげんに嫌気がさしてきた。 Aは、このままでは悔やんでも悔やみきれないと思い「なぜ、騙されたのか?」を考えてみることにした。 証拠に踊らされたのはだしかだ。 Aは用心深いところもあった。それにも関わらず、なぜ容易く騙されたのかが不思議だったのだ。 しかも「人は容易く騙されない。嘘を見抜く直感が備わっている」という話も聞いていたから尚更だった。 そこでAは、そのような行為を生業としている人間を、執念で遂に突き止め会えることになった。 その相手は言った。 「確かに嘘は直感で見破られる。しかし我々は嘘をついているつもりはない」と、当然の顔で言うのだ。 Aは思った。 「それなら、確かに見破られにくいかも。何せ自覚をしていないのだから」 その相手は、更に続けた。 「それだけではない。我々は救済をしているのだよ」 それを聞いたAは驚いた様子で言った。 「人を騙しておいて、救済だって?」 すると相手は言った。 「先程も言ったように、騙しているつもりはない。今後、騙されないよう、教育を施してあげているのだよ」 Aは、呆気にとられ言った。 「つまり、勉強代だと?」 相手は答えた。 「そうとも言うな。というよりも、そうとられてもらって結構。 君も稼ごうという欲望で選択し、行動したのではないのかね? 我々は我々なりに、頭を使い、知恵を振り絞って考えているのだよ。 我々のしていることが気に食わないなら、それ以上に考えていけばいいことだ。 何もしないで楽に稼ごうなどという甘い考えの

98.楽観主義

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98.楽観主義 A 子にとって、全てはどうでもよかった。 日夜流れてくるニュースの事はもとより、お金の事も、人間関係の悩みもA子にとっては、どうでもいい些細なことだった。 流行りの服も別に欲しいとは思わないし、隣の家から時折聞こえてくる騒音も、たいして気に留めることもなかった。 A子は思った。 「みんな、それぞれの環境で、一生懸命生きているのよね」 そう思うと、優しい気持ちに包まれた。 A子は楽観主義だった。 どうでもいいと思いつつも、少しでもラッキーなことがあると、とても嬉しい気持ちになれたし、何か問題が起きても大したことに思えなかった。 どうでもいいからと言って、やる気がなくなったわけではなかった。 実際はまるで逆で、後悔しないよう、本当に自分がしたいことに没頭することにしていた。 A子は、以前はこんな考え方ではなかった。 普通の人のように悩み、苦しみ、ちょっとしたことを気にして腹を立て、欲しいものであふれかえっていた。 それが今や、カツ丼を食べただけでも涙が出てくるほど感動できるようになっていた。 いつからこのような考え方になったのか? A子は思い起こしていた。 それは、忘れもしない、今から一年前の事だった。 医者から余命を宣告された、その時からだったのだ。 A子は余命半年と言われ、それを過ぎて、今生きているだけで幸せだった。 そんなある日の事。 A子は専門医の口から出た驚くべき事実を耳にすることになる。 「信じられません。全て跡形もなく、消えています」 A子は開いた口が塞がらなかった。 なんでも、前向きで楽観的に考えられるようになり、ストレスが激減したのが原因かもしれないとのことだった。 A子は生かされたことに、これまで以上に感謝の気持ちを持って生きていくことにしたのだった。 それから、十年後.. A子は、あの事がまるでなかったかのように、些細な事で腹を立て文句を言っていた。 A子は思った。 「あの日の事を忘れたわけじゃない。なのに、なぜ元に戻ってしまったのかしら?」 A子は気になったので、少し心理学の事を調べてみた。 するとどうやら、快楽適応によるものらしいことが分かった。 これはどんな幸福感を得ても、次第に慣れていき鈍感になってしまうという心理現象だった。 A子は言った。 「原因が分かってよかったわ。文句が出るのも生きてる証拠よね。 さて、あの女にだけは

97.電気信号

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97.電気信号 A博士は、脳の電気信号の仕組みを研究していた。 といってもそれは、心理療法として使えるほど精度の高いものではなかった。 A博士はそれでも構わなかった。 なぜなら唸るほど金があったからだ。 そこまでの精度がなくとも、マーケティングの分野へ情報を提供するだけで、金になるのだ。 例えば、人は脳のこの部分に刺激を与えると、報酬物質が生じやめられなくなり、ご飯を食べることも後回しになるほど夢中にさせることができる。 そして脳に刺激を与え続ける事で、やる気を著しく低下させることも可能だといった具合だ。 他にも、脳のある部分を刺激することで、記憶力をアップさせることができるため、製品やサービスを長期記憶の領域にとどめておくことができるのだ。 これは政治家にも好んで使われた。 脳に悪い印象を与える部分を刺激するための情報を与え続けるだけで、国民は政治家に期待しなくなり、選挙に行く確率も大幅に減るのだ。 それによって、政治家は支援団体だけを囲い込むだけで効率よく票を獲得できるようになった。 このようにA博士は、脳の電気信号を解析していくことで、まるでプログラムを書き込むように、人を操れる手法を各界の大物に提供していった。 そして、入ってきた金で、更に研究が進むと言った好循環が続いていた。 そんなある日の事。 A博士はとても重要なことに気づかざるを得ない状態になった。 それは、自分自身が金により脳に刺激を与えられることで「パブロフの犬」のような状態になっていたということだった。 A博士は気づくことができた。 それと同時に、これまでの知識があるが故にどうしようもないことも知っていた。 A博士は呟いた。 「これは、やめたいけれど、やめられないな..」 補足 何気なく暮らしていると、シンプルな反応パターンにはまり込んでしまっている事は、よくあることだといえるだろう。 それはまるで、スイッチを押すとご褒美が発生するような装置が組み込まれているかのようだ。 虚しさを覚えないための希望でさえも組み込まれているとしたら、どうなるだろう。 「そのスイッチを誰が押しているのか?」それこそが重要だといえるのかもしれない。  その押している者さえも、他の者とすり替えられて刷り込まれない限り..

96.罠

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96.罠 A 男は、犯人が捕まるシーンをみるのが好きだった。 スカッとするのだ。 ドキュメンタリー番組は、特に好んで観ていた。 そこでA男はいつからか、捕まるシーンを目の前でみてみたい衝動にかられてきた。 「そのためには、犯罪を目撃しなければならない」 A男はどうすれば犯罪が起きやすいか考え、実行に移すことにした。 まず、車にカメラを設置した。 車外と車内に関わらず全ての角度から記録できるようにした。 そして次に、荒い運転をしている車を見つけると、わざと割り込みをし、ノロノロと運転してみたのだ。 時には、追い越しをすることもあった。 すると案の定、煽り運転をする人間が出てきた。 A男は「しめた」と思い、逃げる素振りをしながら、警察に電話を入れ捕まえてもらった。 その後、動画サイトへアップし、テレビ局にも提出した。 煽り運転だけでなく、時にはわざと喧嘩っ早そうな男へ、軽く肩をぶつけてみたりしていた。 GPSを設置し、窓を開けっ放しにして、わざと車を盗ませる事もした。 詐欺と思われるサイトも有効活用した。 このような事を繰り返す事で、A男は捕まる事を目のあたりにできる上、動画で収入も得ることができ、A男にとっては一石二鳥だった。 しかも挙句の果てには、警察から感謝状までもらうことができたのだ。 しかしA男はそれだけでは飽き足らなかった。 しまいには、住んでいる家も、わざと窓を外すなどして空き巣が入りやすくしていた。 そんなある日の事。 A男に遂に引導が渡される時が来た。 A男が入念に準備をしていたにも関わらず、突然、通り魔に刺されてしまったのだ。 その通り魔は、A男の動画を見ていたファンだった。 その通り魔は、意識が薄れゆくA男に向かって言った。 「こんなスリルを味わえて、これで願ったり叶ったりだろ..」 補足 実際には、交通事故に百対0が殆どないように、犯罪を誘発するような行為は、判決の中に加味されるといえるだろう。 「触らぬ神に祟りなし」というように、危険を避ける努力も必要なのかもしれない。 どちらにしても、私達が普段見ているニュースは、もしかすると偏った見方によって作られていることも、加味しなければならないのだろうか。その見方すらも偏っているのかもしれないが..

95.高額

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95.高額 A 子は「できるだけ高い物」を買うように気をつけていた。 なぜなら「安物買いの銭失い」を信じていたからである。 A子はバーゲンセールを見ると、逆に腹立たしくなるほどだった。 もちろん高ければそれだけで買うというわけではなかった。 A子は、直ぐに買えないからこそ、じっくり考えるようにしていたのだ。 そして、その時間に至福のひとときを感じていた。 考えている最中に、購入するまで必要性を感じなくなることもあるし、他の物が欲しくなるなど、買わない事も珍しくなかった。 それでも欲しくなり購入した際には、じっくりと楽しむことができたので、これまでの購入で、殆ど後悔したことはなかった。 持ち物については、数は少なかったが、そのどれにも愛着を感じられることで長く愛用していたのだった。 そんなある日の事、偶然、一杯一万円の珈琲を飲む機会に恵まれた。 A子は珈琲が好きで、毎日飲むのが習慣になっていた。 A子は考えた。 「一杯一万円なんて、とても考えられないわ。でも、どれほど美味しいのかしら」 どうやら、有名人もオススメの珈琲通のための珈琲らしい。 A子は考えに考えたあげく、いい経験だと思い、試しに飲んでみることにした。 A子は、一口一口をじっくり舌で転がし珈琲を味わいながら三十分ほどかけて飲んだ。 「まぁ、なんて美味しいのでしょう」 すると飲み終わった後、芸能人がカメラマンなどのスタッフとともに、そのお店に入ってきた。 「ドッキリでした。その珈琲はその辺にある百円の珈琲ですよ。 どうです。それを聞いても美味しいと思いますか?」 A子はたいして驚きもせず、毅然とした態度で答えた。 「もちろん美味しかったですよ。おかげで高いお金を払った分、じっくり味わえたわ。 とても百円の珈琲とは思えない。美味しい珈琲をありがとうございました。」 A子にとっては、時間をかけて味わった分、自然に美味しさも倍増して感じることができたのだった。 何せいつも飲む珈琲は、習慣になっていたため、殆ど数分で飲み干していたのだから。 もちろん、テレビ番組でA子のシーンはボツになったのは言うまでもない。 補足 自分が払った金額によって、料理や飲物の美味しさが変わって感じることが、スタンフォード大学のダグラス・マッコーネルの実験によって明らかになっている。 とはいえ、それは単に「価格が高いから美味しく感じられる」

94.意図

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94.意図 A は、猟奇的殺人を行う事を決めた。 Aは、元々は穏やかな性格だった。 人間どころか蚊も殺せない性格だったのだ。 それがある出来事をきっかけに激変することになった。 それは二年前の出来事だった。 Aにとって全てともいえた妻が不慮の事故で亡くなったのだ。 それからというもの、Aは生き甲斐をなくし、何をしてもやる気が起きなかった。 Aは「残された道は死ぬことしかない」と思い詰めるほどの状態となっていた。 そこでAは考えた。 「どうせ死ぬのなら、何かを成し遂げて死のう。しかし、何をしようか?」 Aは考えに考えたあげく、一つ思い出したことがあった。 「そう言えば、妻は子供の頃、酷いイジメにあったと話していたな」 Aは名前を聞いていたことも思い出し、そして、とんでもない事を思いついた。 「そうだ。いっそのこと、死ぬ前に、妻をイジメていた人間を殺そう」 Aは、イジメていた人間は子供の頃の出来事であるし、既に忘れている可能性があることは百も承知だった。 それでもAは、そうすることで忘れていたでは済まされず、大人になってからも心休めることはできないという抑止力の効果を願い、決意したのだった。 Aはその意図と目的を記録し、綿密に計画を練った。 Aは目的を達成した後、死ぬことを決めていたので、捕まることは恐れていなかった。 ただ、その効果を最大限に高めるため、できるだけインパクトのある殺し方が必要だと考えていた。 そこで、一般的な殺人ではなく、猟奇的な殺人にすることにしたのだった。 そして現在.. Aは目的を果たしていた。 メッセージを残し、自ら自殺したのだった。 その後、世の中はどうなったのか? Aは死んだ後、幽霊となり見届けていた。 ところが結果はAが望んでいたことと、大きく違っていた。 強いメッセージを送りたければ、人々の印象に残りやすいよう、インパクトのある殺し方が有効だということを知った猟奇殺人鬼が、次々と事件を起こし世の中を騒がせていた。 Aの目論見は見事に外れ、イジメが減るどころか、ますます恐ろしい世の中になっていたのだった。 「俺は何のためにやったんだ」 Aは地獄で地団駄を踏んで、いつまでも悔しがっていたのだった。 補足 仮に、復讐を動機として、大人になってから同じ事を相手に行った場合、子供であれば許されることが、大人になってからは許されないということがある

93.悩み

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93.悩み A 子は、悩みを友人に打ち明けた。 「最近、お金に困っているの」 友人は言った。 「大変ね。私も余裕があるわけじゃないけど、少しなら手助けできるかも。 いくら必要なの?」 A子は答えた。 「いえ、大丈夫よ。自分で何とかできるわ。 ただ、大変だということを聞いてもらいたかっただけだから」 それを聞いた友人は言った。 「そっか。それならいいけど、いつでも言ってね」 A子は嬉しそうに言った。 「ありがとう。実は聞いてもらいたいことは、それだけじゃないの」 友人は言った。 「なになに?この際だから、全部打ち明けちゃいなよ」 A子は言った。 「そうね。それなら話すわ。悩んでいる事というのは、気になる人がいるということなの」 友人は言った。 「それで、どんな人なの?」 A子は答えた。 「うん。優しい人よ。困ったときは、いつも助けてくれるの。ついちょっと前にも、難しい依頼があった時手伝ってくれて、とても嬉しかったわ」 それを聞いた友人は微笑ましい顔で言った。 「へぇ。そうだったんだ。それなら、思いきって告白してみたら?」 A子は困った様子で言った。 「私もそう思ったの。でも、そう簡単じゃないのよ。相手は子供かもしれないし..」 それを聞いた友人は驚いて言った。 「え!それはまずいでしょ。でも子供かも知れないってどういうこと?」 A子は答えた。 「リアルは満足してるわ。オンラインゲームで悩んでいるの」 そう聞いても、ゲームをしない友人には何で悩んでいるのか、さっぱりだった。 「ふ~ん。そうなんだ」 A子は続けた。 「お金がなかなか増えないのよね。嫌な奴もいるし。最近気になる人もいるし..」 そう言い続け、A子の悩み相談は止まらなかった。 補足 殆どのゲームの中で、通貨の概念はある。 その収集方法が簡単であれば面白みがなくなる上ゲーム世界のバランスが崩れるため、難しく設定している事が殆どだ。 オンラインゲームであれば、更に人間関係が絡んでくる。 そのため、楽に攻略しようとすれば「チート行為」として嫌われる傾向にある。 中にはゲーム通貨とリアルマネーを交換する「RMT」といったものも存在している。 それらは、ゲームバランスを崩しかねないため、運営元からの管理も厳しい場合が多い。 そのため、ゲーム通貨を稼ぐことは時間がかかるように設定されている。 「RMT」の場合、仕事で忙し

92.神話

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92.神話 A 男は、不治の病だと診断された。 現代の科学では治すことはできず、医者によると、このままでは九十九%の確率で死んでしまうとの事だった。 幸いA男は資産家だったため、財力には事欠かなかった。 その力を使い、A男は最後に残された手段である「冷凍睡眠(コールドスリープ)」に懸けてみることにした。 目覚めた後、知らない人間だけとならないよう、万全を期しA男は眠りについた。 「A男様、遂に治療薬が出来ました」 起こされた時、A男の眠りから既に百年が経過していた。 A男は個室に移され病気は完治し、外の世界を眺めて周ることにした。 その際、付添い人に「驚かないでください」と言われていた。 A男にとっては未来の世界である。どこまで変わっているのかワクワクしていた。 するとそこは、A男の想像を遥かに上回っていた。 その世界は未来の世界というよりも、おとぎ話の世界だった。 それはまるで、A男が子供の頃に読んだ神話の世界だった。 頭が牛の人間がいた。 いやそれは身体が人間の牛かもしれなかった。 それだけではない、羽の生えた人間もいた。 そこは、進歩した遺伝子工学により、様々な生物が合成された世界だったのだ。 それらを見たA男は、専属で付いているリハビリスタッフに、素朴な疑問を質問した。 「この元は、人間と動物どっちなのかね?」 スタッフは、答えた。 「はい。それはここで答えられる内容ではないので、戻った後に博士から話があります」 A男は一通り未来の世界を見学後、施設に戻った。 すると、博士は言いにくそうに説明をはじめた。 「A男さんの疑問に答えましょう。まずは、ショックを受けないでください。心構えはいいですか?」 A男は言った。 「はい。冷凍睡眠に入る段階で、覚悟は決めていたので大丈夫です。 元々は死ぬはずの人間だったのですから。 どんな事でも受け入れる準備はあります」 それを聞いた博士は、安心した様子で説明をはじめた。 「実は、人間は既に滅亡しました。残っているのは、あなただけです」 A男は覚悟を決めていた。 それでも驚きを隠せなかった。 「まさか、そんな..しかしあなたは人間に見える..」 博士は答えた。 「はい。それはあなたを驚かせないために、スタッフを含めあなたの周りにいる全員が、人間の皮をかぶっているだけです」 A男は言った。 「そうだったんですか。でもなぜ、そん

91.自信

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91.自信 A は、自分に自信がなかった。 何をするにしても自信がなく、全てに対し億劫に感じていた。 それは生きていく自信がなくなるほどだった。 そんなある日の事。 Aはその日も、自信について考えていた。 するとAは「自信がないことについては、誰よりも自信がある」ということに気がついたのだった。 Aは思った。 「それなら、自信があるということになるのではないか。自信がないことに自信があるのだから」 そしてAは、自信があるように振る舞うと、実際に自信が出てくるといった科学的裏付けを知ったのもこの頃だった。 そこでAは、根拠は一旦横に置き、自信があるように振る舞う習慣を付けてみることにした。 周りから言われる、今までのAを基準に判断した声も気にしないことにするなど、徹底することにした。 するとAは、日増しに自信がついてくるようになり、実際に自信があると思えるようになった。 それでもAは不安が残った。 「根拠がない自信は、いつ崩れるか分からない」 それでもAは、これまでの経験は活かしたかった。 するとAは、友人の誘いで「空気投げ」という技を見る機会があり、実際に練習したくなった。 これは相手に触れずに投げ飛ばすというものだった。 Aも最初は半信半疑の部分があった。 されどAは、これまでの自信を付けた経験を活かし、絶え間ない努力を続けていった。 そしてAは「空気投げ」にも自信がつき、道場をひらくことにした。 すると「弟子入りしたい」という人も現れてきた。 Aは自信がなかった頃の自分を思い出し、快く許可した。 入門した弟子は、練習のため豪快に投げられる。 その繰り返しが、いつしかTV局の耳に入り、実演することになった。 Aは一躍有名になった。そして日増しに入門者も増えていった。 そんなある日の事。 総合格闘技のチャンピオンが挑戦してきたのだった。 Aはその頃には圧倒的な自信があったため、快く受諾した。 全国の視聴者が見守る中、試合は始まった。 Aは一瞬で、触れることなくチャンピオンを投げ捨てた。 そう思ったのは、夢の中だった。 Aが目を覚ますと、チャンピオンの一発で伸びてしまったことを知った。 Aは、思い込みがいかに現実からかけ離れているのかを思い知ったのだった。 それでもAは思った。 「ここまで来たらやめられない」 Aは、調子が悪かった事を認め、空気投げの名前を催眠投げに変

90.恋心2

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90.恋心2 A 子には、気になる人がいた。 どうしてもその人の事が、頭から離れないのだ。 どんな事でも、その人に繋げて考えてしまう。 その人の事を話せば、いつまでもいつまでも話せるほどになっていた。 そうは言っても、A子には既に優しい夫がいた。 殆ど何も不満はなかった。 唯一、その人の事が頭から離れない事だけが、大きな問題となっていた。 A子にとっては、その人の言動が気になり、その人の事を考えると、感情が揺り動かされてしまうのだ。 ついイライラして、夫に八つ当たりまでしてしまう始末だった。 A子はいつも「どうにかしなければ」と思っていた。 それでも、その人の目が気になるのだ。 A子は問題を大きくならないよう、その人と会う時は、何事もないような素振りをしていた。 それでも「次は、どんな事を言われるのだろう」と、気になってしかたなかった。 もはやA子にとっては、絡められ見動きできない、蜘蛛の糸のように感じるほどになっていた。 A子は何も気にしていない素振りをみせていたため、その人から信頼され、相談を受けることもしばしばだった。 けれども、それももう限界近くの爆発寸前まで来ていた。 と同時に、A子は世の中では私だけでなく、同じような悩みを抱える数多くの人達がいることも十分に承知していた。 そのため、気分転換をしながら、何とかやり過ごしていた。 A子は今日も夫に愚痴をこぼした。 「ねぇあなた、今日もお義母さんがね・・云々。 ・・考え方が違い過ぎるのよ」 補足 嫁と姑の問題は、遠い昔から変わらない大きな問題の一つだといえるだろう。 もちろんこの問題だけでなく、常に頭から離れない愚痴の一つや二つこぼしたい事は、様々あるといえるのかもしれない。 だとしたら、見方によれば、恋と似ているといえるのかもしれない。 ただそれが身体に現れる影響は全く逆となる。 方やイライラや苦しみなど痛みを伴うことに対し、一方ではワクワクしながら胸が苦しく切なくなったりするわけだ。 共通点としては、どちらも長い時間に渡り思考を支配されているということになるのかもしれない。 なぜなら、それしか考えられないような事態に陥るわけだから。 個人主義と自由主義が横行する世の中である。縛られるものがあるはずはない。 だとしても、SMのMのように縛られる事を選ぶのも自由なのである。 思い通りにならないことを自由と感じ

89.宇宙

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89.宇宙 そ こは銀河連邦の、とある研究所での話である。 A博士は助手に言った。 「これで、よしだな」 助手は言った。 「はい。設定は終わりました。 しかし博士、この装置は人道的に許されるものなのでしょうか?」 A博士は答えた。 「そうだな。けれども宇宙全体の平和と進歩のためには、仕方ないことなのだよ」 それを聞いた助手は言った。 「確かにそうかもしれません。この『悪の物質を特定の場所に集約させる装置』がなければ、私達はここまで進化しなかったでしょう」 博士も同意した。 「その通りだ。これがなければ、宇宙に出る技術が出来る前に、各星の生物は皆、滅びていたことだろう。しかも万が一にも、この装置が悪用される心配もない」 それを聞いた助手は、心配そうに言った。 「そうだとしても、この装置を止める者が現れないとも限りません」 博士は言った。 「そうだな。人道的に耐えられない者もいるかもしれん。だからこそ、ここを出ると、その部分だけは記憶を自動消去されるシステムになっているだろう」 助手は言った。 「確かにそうですね。ところで、この私達の脳から抜き取られた悪の物質とは、どんなものなのですか?」 博士は答えた。 「それは、争いや競争意識、怒りや妬み嫉みなど様々だ」 助手は納得した。 「なるほど。では、その物質は何処へ集約されるのでしょうか?」 博士は答えた。 「これは我々の言う『ダークマター』という物質だ。 そしてこのダークマターは、ある星に集約されることになっている。 その物質が集まり、生命が誕生し、死んでまたダークマターへ帰るという繰り返しで成り立つ星だ」 それを聞いた助手は、興味深そうに聞いた。 「そんな星があるのですね。その星は何処にあるのですか? もし、その星の技術が進化して宇宙に出てきたとしたら、大変なことになりますよ」 A博士は答えた。 「銀河の果てにある『地球』という星だ。一定の進化をすると自滅するようになっているので、その心配は無用だ」 それを聞いた助手は、質問を続けた。 「どうして自滅するのですか?」 博士は答えた。 「それは我々のように全ての生物が均等に知能が上がるように設定されていないからだ。 もっともその均等を壊すエネルギーは全てその星に流れ込んでいくため、その星のお陰だといってもいいのだが.. おっと、肝心のその星についてだが、どんなに知能のある生

88.無神経

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88.無神経 A 男は心が荒(すさ)みきっていた。 何をしてもやる気も出ず、ちょっとした事でも、直ぐにイライラしてしまう。 唯一モチベーションが上がるのは、ストレス解消で他人を批判することだった。 A男は自分以外を批判することで、自分の存在意義を確認していたのだった。 A男にとっては、否定や拒絶は日常茶飯事だった。 そんなある日の事。 「さぁ、今日もターゲットを探すか」と、A男は珍しく張りきっていた。 最近、特に鬱憤(うっぷん)が溜まっていたため、それを一気に解消したかったのだ。 いつものようにインターネットを徘徊していると、A男は絶好のターゲットを見つけたのだった。 A男のターゲットとは「自分より弱そうで、偉そうにしているように見える奴」だった。 早速、A男は仕掛けた。 あらゆる非難中傷を浴びせた。 ところが、その相手は何の反応もみせない。 A男は「お得意の無視かい。逃がすか」と、手慣れた様子で突っかかっていった。 それでも「どうかしましたか?」と、冷静に反応が返ってくる。 たまらずA男は、直接的なやり方を変え、様々な所で書き込む戦略に切り替えていった。 その他、これまでの経験で培ってきた、ありとあらゆる方法を試した。 それでも、相手は一向に動じなかった。 「こんな事ははじめてだ。無神経にもほどがある。 こいつには心がないのか? よしそれならそこを突くか..」 それでも全く効果がなかった。 A男は焦りを通り越し、敬意すらわいてきたのだった。 A男は逆に、その相手に学びたくなった。 そこでA男は、思いきって尋ねた。 「これまでの無礼が許されるとは思いません。 あなた程、強靭な精神力を持った人ははじめてだ。 どうやったらその様に出来るのですか?」 すると、相手は答えた。 「申し訳ありません。あなたの言っていることが理解できませんでした。 何せ私はAIですから」 補足 思わずストレス解消のために、相手のせいにしてしまう事や非難してしまったことも、誰にでも経験があるのかもしれない。 その際に、その相手が機械だったとしても、同じストレス解消効果が得られるのだろうか? 例えば、チェスのチャンピオンが、AIに敗けた時、人間に敗けた時以上にショックだったのかもしれない。それでも、人間代表としてのプライドと、ライバルとの勝負に敗けたショックは違うような気がする。 似たような身近に感

87.笑い

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87.笑い A は、お笑いが好きだった。 笑うのは人間の特権だと信じていたし、内蔵が動くので健康にもいいし、ストレス解消になるのだから、願ったり叶ったりだと思っていた。 それでも、普通に生活をしていても、そこまで笑えるような出来事が起きるはずもない。 そのためAは、お笑いの番組をみるのがが好きだった。 そんなある日の事。 「笑いを極めたような人」がいることを知った。 実際には極めていないとしても、Aとの相性は抜群だった。 その芸人が少しでも話すと、Aは笑いが止まらなくなるほどだった。 酷い時には、お腹の中がよじれてしまうほど笑ってしまう。 Aは笑った後「死ぬかと思った」と、頻繁に口にするようになった。 Aは思った。 「このままでは、この人に笑い殺されてしまうかもしれない」 もちろん、実際にはそんな事はありえないと思いながらも、Aは内臓がよじれるような、死の危険を感じるほど笑ってしまうのだ。 そこでAは笑うことについて、見直してみようと考えた。 するとAは、笑わせてもらうことが当たり前になっていたことに気がついたのだった。 自分の力で笑えなくなると、現実社会はますますつまらなく感じた。 そうなると、ますますいつの間にか、笑わせてもらわないと殆ど笑えなくなっていたのだ。 そこでAは思った。「このままではいけない」 それからというもの、Aは自力で笑う努力をすることを決意した。 笑う努力とは、何だかおかしなことである。 そう思うこともネタにしながら、Aは笑えるように努力を続けた。 厳密にいえば、楽しく感じることを気がける生活をしていった。 そうしているうちに、これまでお笑い芸人に笑うことを、いかに依存していたのかを思い知ることになった。 それでも諦めず続けた結果、遂にAは自分の力で笑えるようになった。 そして、Aはそれには飽き足らず、更に磨きをかけていったのだった。 すると努力のかいがあり、いつの間にかAはどんな事でも笑えるようになっていた。 それで困った事は、身の上相談の悩みを聞いている時や、上司の話など真面目な話を聞いている時、そして何よりお葬式の時だった。 Aにとっては、どんな事も可笑(おか)しくてたまらないのだ。 そんな時には、必死で我慢して耐えるようにして、何とかしのいでいた。 自分の力で笑えるようになったAは、今度は笑わない努力をする必要が出てきたのだ。 そして

86.自由意志

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86.自由意志 A 男は、考えていた。 「どうすれば成功できるのだろうか?」 A男は、失敗から学ぶ事や、まずはやってみて経験から学ぶという事を、これまで嫌という程やってきた。 お金も惜しみなく使ってきた。 ところが、結果として冷静に振り返ってみると、殆ど何も変わっていない事に気がついたのだった。 そこでA男は、これからは同じ轍は踏まないと心に固く決めた。 残された時間も無限というわけではないのだから、今後はしっかりと考えた上で、行動を起こすことに決めていた。 そんな中、A男はシュミレーションを頭の中で繰り返していた。 「こうすれば、こうなる。するとこうなる」と、数え切れない程繰り返していた。 すると、どうしても結局のところ、何も変わっていないところに舞い戻ってくるのだ。 そこで、発想の転換が必要になってきた。 専門家のアドバイスも受けながら、コンピューターにシュミレートもさせながら、様々な角度から検証していたのだった。 当然、どれもメリットがありデメリットがある。 ローリスクハイリターンを探していても、短期的には適合するものも、長期的に見ると適合しないものが殆どだった。 仮に全てが同じような結論に導かれるとしても、どちらの道を行くのかを選ばなければならない。 そうやって考えている内に、いつの間にか時間は過ぎていった。 そしてA男の人生は幕を閉じることになった.. A男は最後に思った。 「私の人生に悔いはない。なぜなら、数多くの人生を経験した事と同じほど、考え抜いてきたのだから。最後に気がかりなのは、あの世でどうやって成功するかだ」 補足 選択している内に餓死した「ビュリダンのロバ」では、時間軸は設定されていない。 それは人生という長い時間でも当てはまるのだろうか? 「ビュリダンのロバ」のように、全く同じ状況で選択に迷う、ということはなかったとしても、私達は常に選択の連続の中で生活している。 自由意志が大切とはいえ、選択には一定以上の労力が伴うため、考えていても仕方ないことは、自動的に選択しているといえるだろう。 その自動選択は、歳と経験を重ねるごとに増えて行き、いつの間にかどの殆どがルーティン化し自動的に選択している生活となっているのかもしれない。 であるなら、選択に迷っている間にいつの間にか時間が経過してしまい餓死するロバと、そこまで違いはないのかもしれない。 選

85.加担

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85.加担 A 子は、安売りに目がなかった。 この理由で、徹底してコストパフォマンスを追い求めていた。 「賢く生きなきゃ」 情報弱者になりたくないため、バーゲンセールの情報には、常にアンテナを張り巡らせていた。 そんなある日の事。 A子は最近仕事が減ってきた事を悩んでいた。 安月給の求人しか出なくなっていたこともあり、これまで培ってきた自分の才能を活かし伸ばすため、貯めてきたお金を使い、思いきって起業することにしたのだった。 A子には、消費者の気持ちは十分過ぎるほどわかっていた。 そのためA子は、出来るだけ安くて良い物を提供することにした。 それには安く仕入れることが大事だということで、自社で制作することにした。 その上で、経費を削らなければならない。 経費でもっともかかるのは、人件費に他ならない。 A子はどうやって人件費を削るか、考えを絞り始めた。 まずは最小限の人数で運用することを試してみた。 すると、次第に余裕がなくなり、製品の品質維持が保てなくなった。 しかも最低賃金では、能力の高い人材確保にも限界があった。 そこで、海外の人件費が安い所で制作することにした。 そして、相場の高い国で安く販売したところ、安く売ることが出来る上、利益も出るようになっていた。 この時点でA子は、自国の求人が減っている事に加担していることに気づくべきだった。 A子は、コストパフォーマンスを追い求めていたため、元々、失業の危機から起業した事はすっかり忘れていた。 この理由で、A子はこれで満足しなかった。 品質を維持しながらも、更に経費を削減できないかと試行錯誤していたところ、ある情報が流れてきた。 それは、ロボット化だった。 ロボットは、人件費の大幅削減に繋がる。 A子は「これだ!」と思った。 最初は単純な仕事を人間からロボットに組み換え、ロボットの性能が上がるにつれ、複雑な作業もロボットへ変えていった。 するといつの間にか、人間を雇用する必要はなくなり、全てロボットが製造していた。 そこでA子は、考えた。 「これからはロボットの時代だわ。それなら、ロボットに必要な部品を製造する方が効率的だわ」 それからというもの、A子はロボット会社相手に部品を提供することになった。 そして、ロボット会社は更に性能が高いロボットをA子の会社に提供した。 A子の会社では、性能の高いロボットにより、より

84.正当性

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84.正当性 A は、英雄だった。 戦争ではもっとも敵を殲滅(せんめつ)したということで、国から多くの賞が受賞された。 元々Aは、暴力的な人間だった。 人を殴ってお金が稼げる上、称賛されるということで、はじめは総合格闘技の世界に足を踏み入れた。 Aは人を思いっきりぶん殴ることができて、ストレスも解消されていたため満足していた。 けれど、しばらくするとそれも飽きてきた。 丁度そんな時のこと。 志願兵の募集を見かけ、参加することにしたのである。 Aは敵を殺した時、これまで味わったことのない爽快感を得ることができた。 もちろん敵の中には、家族を持つものがいたこともも知っていたし、優しく思いやりのある人間がいることは理解していた。 けれども、Aにとってそんな事は知ったことではなかった。 ただ殺してスカッとしたいという衝動にかられていただけだったのだ。 喜びに任せ殺していたところ、自国に帰ると「多くの人を開放し命を救った英雄」と、国中から称賛を浴びた。 それでもAは、自分が異常な性格であるのは理解していたので、自国に帰ると頭のスイッチを切り替え、法を犯すことはなかった。 そんなある日の事、Aが偶然見かけたのは、殺してきた敵と同じ国の男だった。 その男はこれまで、数多くの無実の人間を殺してきたことを、Aはある筋で聞いて知っていた。 その男が爆弾ベストを着て都心に行くと聞いており、Aは有無を言わさず飛びかかった。 その瞬間、男が何かスイッチを押すような素振りに見えたため、Aが殴って止めることに成功した。 そして男は死んでしまった。 その後Aは、多くの警官に囲まれ逮捕されることになった。 Aは事情を説明した。 すると「そんな事実はない。お前は騙されていたんだよ」と聞いた。 死んでしまった男は、何の関係もない、ベストを着た無実の人間だったのだ。 Aは訴えた。 「俺はなんてことをしてしまったんだ。でも悪いのは俺じゃない。俺を騙しそそのかした奴だ。 俺は多くの人間が助かると思ってやったんだ。 それに俺は、この国の英雄だぞ」 すると奥の部屋から、上官と思われる人間がやってきてAに説明した。 「君のような反社会性の強い危険な人間を、我が国で野放しにしておけると思うかね? もしまた必要な時が来たら、その時は頼むかもしれないがね」 それを聞いたAは思った。 「なるほど。俺は敵がいてこそ活かされる

83.現実2

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83.現実2 A 男は、仮想現実サービスを利用することにした。 これは新しく出来たサービスで、五感と接続されることで、現実と同じ感覚を仮想現実世界で味わえる。 それでも、一種の虚しさを感じる可能性はある。 今回できたサービスでは、対策の一環として、その世界に入っている時は「現実世界の事を忘れる」というものだった。 経験や知識は、仮想現実で得たように記憶がすり替えられるようになっていた。 では、どうやって戻ってくるのか?というと、入る前に日数を設定しておくことで、仮想現実世界で睡眠に入ったタイミングで戻るようになっている。 A男はそれらの説明を聞いて、安心してサービスを利用することにした。 仮想現実世界では時間の感覚が違うため、脳の許容範囲として、5時間で一ヶ月まで設定できる。 A男は、はじめての事だということで三日にしておくことにした。 狭い部屋に入り椅子に腰掛け、ゆっくりと目を閉じてみた。 するとA男の脳波は、仮想現実サービスとリンクされたのだった。 そして仮想現実世界の三日間を終え、A男は戻ってきた。 クエスト(仕事)など、色々大変だったが、充実していた楽しく過ごせたのだった。 A男は、徐々にハマっていった。 毎日通うようになり、休みの日は連続して使用するまでになっていた。 そんなある日の事。 A男は仮想現実世界の中で仕事が行き詰まっていた。 どうやっても上手くいかない。 実は、この「なかなか上手くいかない」という環境も、現実感を強化するために設定されていた。 そこでA男は、仮想現実世界で気分転換をしたくなった。 ミニゲームというものがあり、やってみることにした。 ミニゲームとはいえ、しっかりとした気分転換を出来るよう、圧倒的リアリティーを持たせるように用意されていた。 A男はゲームを行うため、狭い部屋に入り椅子に腰掛け、ゆっくりと目を閉じてみた。 すると、ベッドの中で目が覚めた。 A男はうつらうつらしながら起きると、朝のルーチンワークを終えた。 「さぁ、今日は何をするかな?」 A男は、休日は何をして楽しむかと考えてみた。 「よし、今日も仮想現実サービスへ行って、続きを楽しもう」 A男は、何となく「何か変だ」とは感じていた。 と言っても、現実の煩雑さの中では、さほど気にすることもなかったため「考えることがバカバカしい」と思い、直ぐに忘れていた。 そんな中、A男の

82.結果2

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82.結果2 A 子はお笑い芸人を目指していた。 正確にはお笑い芸人には、既になっていた。 お笑い芸人の仕事が少なかったため、 お笑い芸人として成功を目指していたのだった。 そんなある日の事。 アルバイト先で、IT企業の素敵な男性との出会いがあった。 その後、しばらくしてA子は選択を迫られた。 お笑い芸人での成功を目指し続けるか? それとも、IT企業の男性と結婚するか? どちらを取るかの選択だった。 参考のため、芸人仲間を考えてみた。 途中で辞めて幸せな家庭を築いた人もいる。 一方で、芸人の道を諦めず、続けていったことで成功した人もいた。 悩みに悩みぬいた結果、どちらにしても、自分で決めたことなら後悔しないと思った。 それでも、ここまで全ての人の反対を押し切って死物狂いで頑張ってきたため、簡単に決めることは出来なかった。 そこで、選択で悩んだ際の専門的アドバイザーとして、最新型のコンピューターを駆使した占い師の噂が耳に入った。 どうやら、かなり精度が高いらしい。 A子は「参考にはなるかも」と思い、相談することにした。 すると「結婚を選べば、不幸な結果になり、お笑い芸人になれば、成功する」と言われた。 ここまで明快に言われると、A子も影響を受けずにはいられなかった。 そして、結婚を断ろうとした結果、どこからか頭に声が聞こえてきた。 「そのアドバイスは参考にしては駄目」 それは自分の声だった。 「そのコンピューターは二十年先までしか計算できないわ」 A子は、それを聞いて驚いた。 「今のあなたは10年後、突然自分の過去に話しかけられる能力を身につけることになるわ。 私は三十年後の未来から話しかけているの。 あなたはお笑い芸人になると、有名になって天狗になり、挙句の果てに闇営業に出てしまい、社会からはじき出される結果になるわ」 すると、別の声が聞こえてきた。 「結婚を選んだ三十年後の私よ。結婚を選んだことで、大変な思いもしたけど、それを乗り越え、今では幸せになっているわ。こっちを選んで良かったと思っているわ」 それを聞いたA子は、答えた。 「そっか。なるほど。じゃあ、お笑い芸人の方を選ぶことにするわ」 それを聞いた、未来のA子二人は驚いた。 「え!せっかく教えてあげたのに、なぜ?」 A子は答えた。 「だって、四十年後の結果は分からないじゃない。 それに闇営業に出なければ結果

81.痛み2

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81.痛み2 A には、痛みを感じなかった。 これは身体的なものだけではなかった。 そのため、誰かに何を言われても何も感じなかった。 何も感じなかったため、誰かに何かを言われる事を恐れる必要もなかった。 言われた人の気持ちも理解できないため、Aはこれまで、誰に遠慮することなく言いたい放題を言ってきた。 ところがそんなある日のこと、相手を怒らせてしまい、半殺しの目にあうことになってしまった。 その時、後遺症が残った。 Aは、痛みを感じるようになっていたのだ。 Aは思った。 「これでは不完全だ。役に立たたないとみなされ、いずれはゴミ処理場行きとなってしまうだろう」 Aは、最新型のロボットだったのだ。 その後遺症が、新型の開発に大いに役立つことになった。 それまでのロボットは痛みを感じる機能がなかったため、制御が効かなくなることが多く、人間を傷つける事があり、それが懸念されていたのだ。 その一方で人間は、ストレス化社会の影響から心の痛みを取り除く処置の開発が進んでいた。 その時も、痛みを取り除く事での社会的影響が懸念されていたため、Aの出来事は大いに役立つことになった。 そしてそれが元で、アンドロイドとサイボーグが誕生した。 それから十年後.. 町中ではこのような会話がかわされていた。 「やぁ、君は元アンドロイド?それともサイボーグ?」 そして更にそれから百年後.. 会話は次のように変わっていた。 「私の祖先は、アンドロイドだったのよ」 「そうなんだ。最近聞いたんだけど、僕の先祖はサイボーグだったってさ」 補足 現時点では、解明されていない問題があるため、ロボットの開発となると、意識をはじめ痛みや感覚が取り上げられる事が多い。 神経系統の多さと脳の研究については、過去ロボトミーの問題もあり、外部から調べることが中心となるため、なかなか進歩が進まないのかもしれない。 だとしても、遺伝子工学のキャスパーのように、一旦キッカケが出来ると一気に進む可能性もある。 その時には、感覚は大した問題ではなくなっている可能性も否めない。 「痛みとは、実際の危険を回避する役目」 それ以上でもそれ以下でもなくなっている可能性もあるといえるのだろう。 危機感を煽るマーケティングがなくっていればの話だが..

80.証明

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80.証明 神 は激怒し、A男を叱咤(しった)した。 「お前は、何様なのだ!」 確かにA男は、神を否定した。 神の矛盾点を数多く述べた。 ところが、その後神の怒りに触れたのだ。 A男は、恐る恐る言った。 「何様と言われましても、ただの人間です」 すると神は落ち着きを取り戻し、諭した。 「ほぅ。ただの人間なのか。ならば、なぜ私の存在を認めようとしない? 私を批判し、否定するのであれば、お前は私より賢いということになる」 A男は答えた。 「いえいえ、滅相もない。私はただ、疑問に思うと夜もおちおち寝てられないたちでして、いくつか引っかかることを言っただけですよ」 神は説明した。 「何も疑問に思う必要はない。私は常に深い考えの元に物事を起こしているだけなのだ。 お前達に理解できない事があったとしても、それは仕方のないことだ」 それを聞いたA男は聞いた。 「では、その深いお考えというものを、是非とも聞かせてくれませんか?」 神は答えた。 「言っても構わないが、それは意味のない事だ。 なぜなら、今のお前達では到底理解できないからだ。 時期が来たらわかる時が来るだろう。 その時になれば話してやろう」 A男は言った。 「確かにそうかもしれません。 しかしながら、今はまだ分からなくても、その話をヒントに理解できる道が開けるかもしれません。 是非、お聞かせください」 神は言った。 「お前は、実に面白い男だ。 だが、私は言ったはずだ。 時期が来たら話すと言った事にも意味があるのだ。 聞くだけ時間の無駄だ。 お前はそれに従えば良い」 A男は、納得いかない様子で言った。 「おかしいなぁ。それこそが私の頭を悩ませている頭痛の種なのです。 それでは辻褄(つじつま)が合わない。 それでは、存在するという証拠をみせてください」 それを聞いた神は、呆れた様子で尋ねた。 「お前の名前は、何といったかな?A男ではなく、本名を聞かせてみよ」 A男は言った。 「はい。私の名前は、殺人課のコロンボという者です」 それを聞いた神は言った。 「ほぅ。なるほど。 であるなら証拠を用意するのは、私ではなく、お前の役目ではないか」 補足 本来意味の無いものに力を与えてしまうと、どうなるのだろうか? もしかすると、意味付けで終始するといった、益々意味のないものになるのかもしれない。 悪に対しても。苦しみに満ちていることに対

79.曖昧

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79.曖昧 A 子は遂に「若返りの秘訣」を編み出した。 それまでA子は、日々老いていくことに耐えられなかった。 様々な事を試した結果、殆ど効果を感じられなかった。 A子は、焦りを感じていた。 久しぶりに会った同級生が歳を取っている姿を見ると「きっと,自分もそうなんだわ」と思え、気が狂いそうになっていた。 年齢に応じた美しさなんて、A子にとっては負け惜しみにしか聞こえなかった。 そんなある日の事。 A子はある疑問がわいた。 「歳をとったなんて、どうしてわかるのかしら?」 A子は、確認するために試してみた。 まず、今日の自分の姿を鏡でまじまじと見つめ確認した。 念の為、スマホで自分の姿を写真にとっておいた。 そして明くる日、再び、自分の姿を確認してみた。 すると、どこも変わったように見えない。 そこで写真を取り、昨日の写真と比べ確認してみることにした。 それでも、来ている服以外、どこも変わったように見えない。 A子は「変わっていないということは、歳をとっていないのと同じでわないか」と思った。 確かに三十年前の写真と比べると、明らかに違いがわかる。 同級生と久しぶりに会ったときも、変化を感じた。 そうであっても、昨日自分と比べると、殆ど変わったようには見えない。 もちろん気が付かないだけで、わずかな変化は生じていて、歳をとっている事は理解していた。 「ということは、それだけ僅かなのであれば、それよりほんの少しだけ若返る努力をすれば、いずれは大きな変化として若返る事ができるのではないのかしら」と、A子は考えた。 「大きな努力はいらない。ほんのちょっと、気づくか気づかないかだけの若返る努力を続けていってみよう」 それから三十年後.. A子は確かに、年齢より遥かに若く見えるようになっていた。 ところが、その翌年の事である。 A子は大病を患い、死期を迎えることになった。 A子は最後に言った。 「やっぱり、歳には勝てなかったわ」 補足 小さな積み重ねが、やがては大きなものになる。その事実は、簡単に理解できる。 そこで「その小さな積み重ねと、大きなものを、どこで句切れるのか?」と考えると、途端に曖昧になってくる。 だからといって曖昧なままだと、根拠を含めた全てが曖昧になってしまう。 「年齢より若く見える」と定義した場合、それが一時間であっても同じなのか?といえば、現実的ではなくなって

78.同一性

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78.同一性 A は、目覚めた。 そして、びっくり仰天した。 Aが驚くのも無理はなかった。 Aが起きると、そこにはハエになっている自分がいたのだから。 Aは、何が起きたのか懸命に思い出そうとした。 「そうだ。幽体離脱の訓練をしていたのだった!」 Aは友人と幽体離脱を試していて、途中で気を失ったことを思い出したのだった。 だが、そこには自分の身体はなかった。 Aは、何とか自分の身体に戻ろうと、自分の身体を探した。 すると、自分の身体が勝手に歩いているではないか。 どうやら、一緒に幽体離脱をしていた友人が、自分の身体に入ったらしい。 その友人は、自分のフリをしていた。 見ていると好き勝手しているではないか。 そして誰も、Aでないと気づいていなかった。 Aは「早く何とかしないと」と思った。 されど、今はハエの身である。 話すこともできない。 Aは、近くにあった研究所のことを思い出した。 幸い近くの研究所では、虫の研究をしている博士がいた。 Aは、必死の思いでその研究所に飛んでいき、博士にアピールした。 博士は、はじめは追い払おうとしていた。 それでも、奇妙な飛び方をするハエを見て、観察することにしたようだ。 Aは「しめしめ」と思い、そこに置いてあった新聞の「た」という文字に止まった。 そして次に「す」という文字にとまった。 さすがは博士である。どうにかこうにか博士に助けを求めていることが伝わった。 博士にとっては、思考しコミュニケーションが取れるハエに、大いに興味がわいたらしい。 博士は五十音の文字を用意した。 博士は言った。 「お前は、何を助けて欲しいんだい」 博士が、ハエが止まるメッセージを読んでいくと、事情が飲み込めたようだった。 博士は言った。 「なるほど。君はハエではなく、本来の君の身体には友人が入っている、ということか」 Aは喜んで飛び回った。 そして思った。 「そう、俺が伝えたかったことは、それなんだ。ここまで理解してくれた博士だ。何とかしてくれるだろう」 すると、博士は言った。 「ところで、それを証明する方法はあるのかね?」 補足 自己を形成しているものとは何だろうか? 自己の証明とは、姿形が変わったとしてもできるのなのだろうか? もちろん、事故にあって整形したとしても、歳をとってシワだらけになったとしても証明できるのかもしれない。 とはいえ、それはあくま

77.信頼

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77.信頼 A 男は、年中お金に困っていた。 どんぶり勘定で、努力すればするほどマイナスになり、お金のやりくりで常に苦労していた。 A男はお金の事でこれ以上悩みたくないと、心底思っていた。 そんなある日の事。 A男の元に、差出人不明の小包が届いた。 A男は訝(いぶか)しげに小包を開けてみた。 するとそこには、小さな装置が入っており、一言メモが添えてあった。 「誰も傷つかず大金が入る装置-使い方はボタンを押すだけ」 それを読んだA男は、何かのイタズラかとせせら笑った。 そう思っても、好奇心を抑えられなかった。 A男は思った。 「これを押すと、どこかに繋がっていて、誰かが笑っているのだろう。 ま、それでも構わないさ。まさか爆弾ではないだろう」 そう思いながら、A男は恐る恐るボタンを押した。 押した後も、別に何も変わったような事は起きなかった。 A男は「やはり、思ったとおりだ。バカにしやがって」と、その装置をゴミ箱に捨てようとした。 すると、先程読んだメモの裏に何か書いてあるのが目についた。 「このボタンを押すと、一年に一度だけ全ての人から一円だけなくなり、その分あなたの口座に入金されます。期間は十年間」 A男は「まさか」と思いながら、スマホで口座の残高を確認してみた。 すると何と、七十八億一五一四万七七三五円が入っているではないか。 振込名義人の名前は、英語で記載されており、聞いたこともない名前だった。 A男は「夢じゃないよな」と思いつつも、何とか冷静さを取り戻した。 「なるほど。確かに年に一円程度だったら、どんな人間でも、知らない内になくなっていることも有り得るだろうし、確かに誰も傷つかないな」 A男はその後、その金でこれまで苦しめられてきた一千万ほどの借金を清算した。 その後、これまで欲しかったものを購入した。 そして、お世話になった人のリストを作り、お礼をしたのだった。 それでも、預金の数字は殆ど変わったようにみえなかった。 「これが毎年入ってくるのか。とても使いきれないな」 A男は、気持ちに余裕が出てきた。 そこで、その金の使い道を考えてみることにした。 A男は「ここまで必要ないな。一億もあれば十分だ」と思った。 そして、残りを全て自分と同じ様に頑張ってもそれに見合った生活を送れない、そんな報われない人達へ与えようと思った。 そう考えても、A男は心当たりがなかっ

76.正体

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76.正体 A 博士は、目の前に置かれたりんごを眺めていた。 手に取り、実際にかじってみると、美味しいりんごの味がした。 A博士は、呟いた。 「ふむふむ、なるほど。確かにりんごだ」 実はそこに有ったのは、りんごではなくみかんだった。 みかんがA博士には、りんごに見える。 見えるだけではなく、手触りも、味も含んだ五感全てがりんごなのだ。 A博士は、言った。 「成功だ」 A博士は、五感全てを変換できる装置の開発に成功し、喜びもひとしおだった。 とはいっても、これはまだ序の口だった。 A博士の本当の目的は、透明人間になることだった。 そしてそれは、その装置を使うと、いとも簡単に成功した。 A博士は言った。 「おお!これで、誰にも見られず、触れず、匂いもせず、聞こえず、気配を感じられることもない。まさに透明人間だ」 実際には、A博士はそこにいた。 それにも関わらず、誰にも確認することができない。 それはまさに、これまでになかった画期的な発明といえた。 A博士によると、原理自体は簡単だったらしい。 五感の感覚を変換するだけで可能だということだった。 A博士は言った。 「さて、これを実用化して、世に出すとするか」 その声は、誰にも聞こえなかった。 するとその後、問題が起きた。 A博士「あれ?」 元に戻る機能が、働かないのだ。 しかも、透明化する機能も使えなくなっていた。 「さっきまでは、正常に動いていたのに、なぜだ?」 A博士は、さほど慌てることなく「まぁ、いいか」と、装置の修理に取り掛かった。 けれども、一向に直る様子はなかった。 「困ったものだ」A博士は、文字を使い助手にメッセージを送り、共同であたったが、それでも直らなかった。 A博士は言った。 「このままでも生活できないことはないが、何かと不便だな」 A博士の呑気な考えは、次の瞬間消え去ることになった。 部屋に屈強な男達が入ってきて「逮捕する」と言われ、拘束されてしまったのだ。 博士は透明の状態を利用して逃げようとした。 しかし相手もそれは予想していたらしく、助手を人質にとられてしまい「ここだろう」という想像で場所を特定され捕まってしまった。 牢獄に投獄されてから聞いた話だと、どこから情報がもれたのか分からないが、透明になって戻れなくなったことが、国にとって危険分子だと認識されたらしい。 機密情報が取られ放題になってしま

75.自己

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75.自己 A 子は、A子ではなかった。 A子がそれに気がついたのは、最近だった。 A子は一般的な幸せな人生を歩んでいた、と思っていた。 それは全て他人の人生だったのだ。 それは、二年前の事である。 A子は、虐待をはじめ精神的苦痛が重なった状態が長期間続いたことが原因で、精神病院に入院していた。 入院してからも一向に改善される気配がなく、A子はストレスが原因で、時折自制が効かなくなり暴れていた。 そして、それはA子だけではなかった。 時代の情勢で、精神的に弱い者は耐えられない世の中になっていたため、どの精神病院も入院患者で溢れかえっていた。 人手不足は明らかであり、手助けをしていた人がストレスのため入院するケースも珍しくなかった。 そこで対策として、ある薬が開発された。 その薬には、遺伝子に他の典型的な幸せな人生がプログラミングされており、直接脳の記憶を書き換えることができた。 もちろん、その薬を飲む事は本人の自由意志で決めることが出来、いつ服用を辞めるかも本人の意思が尊重されていた。 A子は、薬の効き目が薄れてきたことで、本来の自分自身の記憶を思い出してきたのだった。 A子はまた、選択しなければならない。 繰り返し発狂するような自分自身の精神状態か? 或いは他の人間の記憶とは分からない幸せな人生か? A子は、もう戻りたくなかった。 薬を処方してもらい、再び正直に何でも打ち明けられるパートナーと暮らすことにした。 A子の人生は、どちらが真の人生だといえるだろうか? 実は、どちらもA子の人生ではなかった。 A子は某国でスパイ活動を行っていた。 そして、ちょっとしたミスが原因で捕まっていたのだ。 そこで新しく開発された自白剤をむりやり服用されていたのだった。 それと知らないA子は、続きを話し始めた。 「あなた。今日もこんな事があったのよ」 補足 実際の経験だとしても、妄想だとしても、記憶が関わっていることに違いはないといえるのだろう。 とはいっても、記憶がその人物を決めるとしたら、自由に書き換えることもできるようになるかもしれない。 他人の記憶が自分の記憶のように感じられた時、その感じた人物は誰なのだろうか? 仮に自分の記憶や考えではなく、自分以外のものが、自分と関わったことで見たり感じたりしたものが自分の記憶を形成していたとしたら、どうなるだろう? それは、自分以外の

74.証拠

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74.証拠 A は、騙されるのが大嫌いだった。 とはいっても、全てを疑っていても何も進まないため、信じられる根拠が必要だと考えていた。なぜなら、 それらしき事は、いくらでもでっち上げられることをAは知っていたからだ。 いくつかの事実を組み合わせて、繋がり合う信念全てを上手く適合して再構築するだけで、たとえそれがどんな事でも、それらしき事にする事ができると、Aは気づいていた。 そこでAは、何事においても信じる前に、エビデンスを重要視したのだ。 エビデンスとは証拠・根拠、証言、形跡のことだ。 Aは、更に確実なものにするために、具体的な数字を見ることにしていた。数字は嘘をつかないと信じていたからだ。 そんなある日の事。 Aは考え直さなければならない出来事があった。 それは、エビデンスを元に統計などの正確な数値を提示してあるに関わらず、事実と違っていたことが判明したからだ。 そこでAは「数字のマジック」というものに気がついた。 つまりそれは「偏ったエビデンスばかりを提示されることで、事実が歪曲されて伝わってしまう」という問題だった。 言い換えると、証拠が伴う一貫性があるだけでは、ひとつの理論でさえも合理的で強力なものにすることはできないということだった。 「となると、何を信じるべきなのか?」 Aは困り果ててしまった。 補足 エビデンスや数値が提示されているだけでは、それが真実かはつかめないといえるのかもしれない。 ひとつの事象でもエビデンスは多数ある。 知らないことで、真実が見えなくなる状態を完全に補うことができるのだろうか? 例えば、心理学の研究結果で出ている証拠だとしても、その実験に参加したのが心理学を学ぶ研修生だけだったとなると、途端にそのデータはあやしくなってくる。 特に状況により変わる場合、偏ったデータは信頼性が薄れるといえるだろう。 とすれば結局のところ、騙される事を覚悟した上で、疑問を持ちながらも慎重に検証していくしか残されていないのかもしれない。 その証拠として..

73.存在

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73.存在 博 士は、遂に不老不死の薬を完成した。 それは酸素と混ぜ合わせ、吸い込むだけという手軽さだった。 最初の治験として、密かに応募していたA子が試されることになった。 A子がそれを吸い込むと、あっという間に不老不死の身体を得ることができた。 ところがその直後、博士は驚きの声をあげた。 「何!まさか、そんな事が起こるはずがない」と言って、博士は事切れた。 思わぬ事態が起こったのだ。 それは、使用した薬が、なぜか一度の使用により変化したのだった。 しかもその変化は、真逆の効果が生じたのだ。 つまり一瞬で死んでしまう効果だった。 その薬は空気に紛れ込み、あっという間に世界中に広がってしまった。 そして世界中の人間が息絶えた。 A子一人を除いて。 A子は一人になってしまった。 気が狂いそうになり、死にたいと思った。 ところが、薬の効果で不老不死になってしまったため、死ねなかった。 A子には、生きるしか選択肢が残されていなかった。 時には残された芸術を鑑賞しながら 「私が見ているから、この芸術には、まだ存在価値はあるわ。でも私は、どうなのかしら?」 一人になってしまったA子は、自分自身の存在価値を疑いはじめていた。 自分以外、誰も存在しない世界で、何の意味があるというのか? A子は、もはや自分には存在価値は無いに等しいと思っていた。 そんなA子の虚しさをよそに、どこからともなく声がした。 「大丈夫?聞こえてない?過去に干渉したら、パラドックスになって、世界は崩壊してしまうからね。」 「大丈夫だよ。時間軸が違うから、過去にも未来にも干渉したくともできない。出来るのは、観るだけだよ」 「そっか。それで安心した」 「それより、このドキュメンタリー面白いね」 「そうだね」 それは、未来からの声だった。 A子は、未来の他の星から娯楽として鑑賞されていたのだった。 未来の異星人は、声を合わせて言った。 「この地球人、面白いね。十分、存在価値があるよね」 補足 量子力学では「この世のものは、見るまでは存在しない」といった素粒子の振る舞いが記述されているようだ。 であるなら、誰も見ることがなければ、存在しないに等しいということになるのだろうか? 量子力学でないにしても、例えば芸術については、見る人がいない状態で、それに価値があるといえるのだろうか?といった疑問が残る。 そう考えると、

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