9.良心

9.良心

A博士は、遂に画期的な発明をした。
ところが、A博士は浮かない顔をしていた。

「これを世に出せば、私は終わりだ」

A博士は苦悩していた。
「しかし、これを出さなければ、人類が終わってしまう」

近年、科学の進歩は目まぐるしかった。と同時に良心を持たない人間も増えていた。
このままでは驚異的な科学の力を心無い人間が使用し、人類が滅亡するだけでなく地球が破壊され生命そのものが絶滅するのは目に見えていた。

A博士はその確率を計算していた。

「もう時間がない」
A博士が発明したものは、脳の変異した遺伝子を正常な状態に戻すもので、それは特定の一部のみにしか効果がなかった。

その一部とは「良心」を司る部位だったのだ。

A博士はそれを「ジェミニ回路」と名付けた。
A博士は意を決し、行動を起こすことにした。

遺伝子ドライブの技術を利用し、ジェミニ回路を虫達に組み込んだ。
それによって、食べ物や飲み物或いは直接的に一気に拡げられる。
これは、あくまでも良心を司る部位が欠損している人間だけに働きかける。もちろん副作用も全くないことは立証済みだった。

A博士が行動を起こした後、良心のない人間は皆無になった。

そのことで科学は悪用を躊躇する必要がなくなり、想像を遥かに超えたスピードで進歩していくことになった。
後に人類は本物の楽園を手に入れることになる。

そんなある日の事、A博士は裁かれることになった。

裁判所で判決文を言い渡された。
「A博士は良心が欠損している数多くの人間の、良心を取り戻すか否か?という選択という権利を奪った。
これは歴史上稀に見る著しい人権損害である。よってA博士に死刑を申し立てる。
A博士、異議はないかね?」

A博士は言った。
「はい。既に十分に検討し覚悟の上で行ったことですので、異議はありません」

補足

人類が大きな進歩を遂げる度、悪用の危険性は常につきまとうことになるといえるだろう。
それは簡単で便利になるほど、尚更リスクは高くなる。

もしかすると、何より先に研究と開発をしなければならないのは、良心を司る部位なのかもしれない。

とはいえ、良心のない人間が反発する恐れも否めない。
人類を守るために、人権と良心のバランスはとれるのだろうか?

※当ブログで取り扱う物語はフィクションです。実在の人物、団体、事件などとは一切関係ありません。

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