14.パラドックス

14.パラドックス

Aは、恐怖に怯えていた。

「恐ろしい」

何に怯えていたのか?
それはAが、ある事実に気がついてしまったからだ。

その事実とは「何も変化していない」という事実だった。
仏陀は「変化しないものはない」と説いた。Aもそれに納得していたはずだった。

それがある日突然、事実に気がついてしまったのだ。

「変化しているようで、その実、全く変化していない」

時間も同じだった。
時間は進んでいるように見えて、全く進んでいなかったのだ。

Aは、自分が主観的に解釈しているだけの勘違いだと信じたかった。
そこで検証を試みた。
すると検証すればするほど、何も変化していないことになってしまう。

例えば、一時間後に想像している自分を想像してみた。
Aはこの想像だけは現実が変化していないことを確認するため、曖昧でよいとは思えなかった。

一時間後を想像するためには、一時間後に到達した自分を想像しなければならない。リアリティーを持って到達したことを想像するには、三十分後に到達した自分を想像しなければならない。

当たり前だが、一分後に到達した自分をする必要がある。そのためには、一秒後に到達する自分を想像する必要があり、0.1秒後に到達する自分を想像必要がある。その前に0.01秒と辿っていくと無限に続くことになり、絶対に到達できないのだ。正確に計測しようとすればするほど難問に思える。

仮にこの問題を解決がしようとすると、無限ループに陥ってしまう。
つまりこの事実は、変わったように見えているだけで、変えようとしても実際には何も変わらない事を受け入れなければならない。

これはAにとっては、無限に続く恐怖を受け入れることを意味していた。

Aは思った。
「このままでは、発狂してしまう」

そこでAは考えた。
受け入れるには一つしかない。それは、全てを幻だとして受け入れることだ。

幻であれば、変わろうが変わるまいが、そこまで重要でなくなるからだ。するとAの心から恐怖が消え去り、ようやく落ち着いた。

そこで、Aは更に考えを進めてみた。
「幻であれば、何をしても構わないのではないか?」

Aは、徐々に暴走していった。

当然Aは逮捕され、一生を刑務所で暮らされなければならなくなったのだった。

「たとえそれが幻だとしても、ルールを守るべきだった」
Aは監房の中で冷たく感じる壁を眺めながら、そう思ったのだった。

補足

全てを計算ではじき出せるようになる日はくるのだろうか?

はじき出そうとすれば、するほどに複雑化してくるといったジレンマが、どこかで生じてしまうといえるだろう。

論理を使えるようにするのは、そう簡単ではないのかもしれない。どこかで妥協が必要となってくる。
であるなら、真に確かなものはあるといえるのだろうか..

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