30.無料

 

30.無料

Aは無料が好きだった。

「無料でなければ許せない」
それは、Aのポリシーとも言うべきものだった。

そして、遂にAが待ち焦がれた時代が訪れた。

そこは、全てが無料で利用できる世界だった。
スマホももちろん無料で手に入り利用できる。
住む家も家賃も必要なく、無料で住むことができる。
車さえも無料で持つことができた。

もちろん条件はあった。

それは「広告が表示される」ということだった。
それと、どんなサービスや物であっても、そこまで上等ではなかった。

食べ物も、無料で手に入った。

提供主にとっては、本来捨てていたものへ安価ながらも国から支給されるので、喜んで提供していたからだ。
多少形が崩れていたりしていたが、食べられないものではなかったから、Aにとっては全く問題にならなかった。

スマホやパソコンとインターネット接続も、起動と表示する度に広告が表示され、速度もそこまで速くはなかったが、何の支障もなかった。

医療も少し精度が落ちるが、無料で受けられた。

録画されたものを図書館から無料で借りることで、学ぶこともできる。
これも全て、広告を煩わしいと思う人や、上のランクを得るためにお金を払ってくれる人達のお陰だ。

Aはそのうちに欲が出てきた。
もっと満足したい。

といっても、無料のポリシーは譲れない。

Aはいつしか、インターネットの世界にいる時間が長くなっていた。
インターネットであれば、時間をかけて辛抱強く探せば、より満足度の高いものを見つけることができるからだ。

Aは、満足した生活をおくっていた。

そして、Aのような人達が増えてきた。
それを知った有料にお金を払っていた人達が、お金を払うバカバカしさに気がついた。

やがて世の中の経済活動は停止してしまったため、殆どの無料のものは廃止されるようになった。

残された無料のものは、より強力なメッセージを放つ広告に置き換えられるようになった。

それにより、無料のものは価値がなくなっていった。
世の中は、元の状態に戻ることになった。

それでもAの無料志向は変わらなかった。

今ではAは、現実はできるだけ見ないようにし、細々と食いつなぎながら暮らしているのだった。

補足

全ては無料になる可能性がある。そうなれば、二極化も埋められるのかもしれない。とはいえ、タダ乗りを全面的に肯定できるとは限らない。

問題は、それだけでは収まらなくなる可能性があるということだ。
「知らない人、やっていない人が損をする」となれば、エスカレートしていく可能性も否めない。

絶対に誰も損をしないシステムを構築できるなら別だが..

※当ブログで取り扱う物語はフィクションです。実在の人物、団体、事件などとは一切関係ありません。

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