78.同一性

78.同一性

は、目覚めた。
そして、びっくり仰天した。

Aが驚くのも無理はなかった。
Aが起きると、そこにはハエになっている自分がいたのだから。

Aは、何が起きたのか懸命に思い出そうとした。

「そうだ。幽体離脱の訓練をしていたのだった!」
Aは友人と幽体離脱を試していて、途中で気を失ったことを思い出したのだった。
だが、そこには自分の身体はなかった。
Aは、何とか自分の身体に戻ろうと、自分の身体を探した。

すると、自分の身体が勝手に歩いているではないか。
どうやら、一緒に幽体離脱をしていた友人が、自分の身体に入ったらしい。

その友人は、自分のフリをしていた。
見ていると好き勝手しているではないか。
そして誰も、Aでないと気づいていなかった。

Aは「早く何とかしないと」と思った。

されど、今はハエの身である。
話すこともできない。

Aは、近くにあった研究所のことを思い出した。

幸い近くの研究所では、虫の研究をしている博士がいた。
Aは、必死の思いでその研究所に飛んでいき、博士にアピールした。

博士は、はじめは追い払おうとしていた。
それでも、奇妙な飛び方をするハエを見て、観察することにしたようだ。
Aは「しめしめ」と思い、そこに置いてあった新聞の「た」という文字に止まった。
そして次に「す」という文字にとまった。

さすがは博士である。どうにかこうにか博士に助けを求めていることが伝わった。
博士にとっては、思考しコミュニケーションが取れるハエに、大いに興味がわいたらしい。

博士は五十音の文字を用意した。
博士は言った。
「お前は、何を助けて欲しいんだい」

博士が、ハエが止まるメッセージを読んでいくと、事情が飲み込めたようだった。

博士は言った。
「なるほど。君はハエではなく、本来の君の身体には友人が入っている、ということか」

Aは喜んで飛び回った。

そして思った。
「そう、俺が伝えたかったことは、それなんだ。ここまで理解してくれた博士だ。何とかしてくれるだろう」

すると、博士は言った。
「ところで、それを証明する方法はあるのかね?」

補足

自己を形成しているものとは何だろうか?
自己の証明とは、姿形が変わったとしてもできるのなのだろうか?

もちろん、事故にあって整形したとしても、歳をとってシワだらけになったとしても証明できるのかもしれない。

とはいえ、それはあくまでも外部からの手段だけだといえるのだろう。

例えば、数十年ぶりに街でばったり出くわした友人全てに気づくことは出来るのだろうか?
オレオレ詐欺が横行する世の中である。気づかなかったとしても不思議ではない。

仮に、幼い頃の同級生の中でも自分に似ていた誰かになりすまし、ばったり出くわした友人に「オレオレ覚えてる?○○だよ」と、似ている共通の友人のフリをしても、気が付かれない可能性もあるだろう。

細胞単位でいえば、何度も生まれ変わり再構築しているといえる。
再形成された位置パターンが殆ど同じように見えるため、同じだとわかるだけではないだろうか。

そう考えると、同じ自分は存在せず、それは単に継続しているように見える自分だけなのかもしれない。全く同じ個性や出来事が存在しないように..

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