25.恋心


25.恋心

子は、時折オンライゲームで気晴らしをしていた。

人と関わるのは面倒なので、会話は最小限で済ませ、もっぱらテンプレートの文言を使って意思伝達を行っていた。

そんなある日のこと、なかなか上手なプレーヤーBがいて、時折A子を手助けしてくれていた。

A子がテンプレートで「ありがとう」と言うと、相手も「どういたしまして」と返してくれた。そのうち、いつしかテンプレート以外でも会話をするようになっていた。
「今日の調子はどんな感じ?」
「なかなかだよ」といった具合だ。

A子はいつしか相手の優しさに惹かれ、恋をしていたことに気がついた。
相手もそれを受け止めてくれた。

そうなると実際に会いたくなる。

もちろん、実際にはオンライゲームのキャラクターとは違うことは、重々承知していた。

ところが、なかなか会ってくれない。
A子はオンライゲームのみの関係を求めていると思い、無理には言わなかった。

それから5年後。

Bは、大切な話があると言った。
A子はどんな話なのだろうと、ドキドキしていた。

すると、Bは言った。
「私もA子さんと会いたい。心からそう思ってる。しかし、それは無理なんだ」

それを聞いたA子は前々から用意していた言葉を言った。
「そんな事は気にしないでいいのよ。Bも事情があるだろうし。私はいまの状態で満足よ」

すると、Bは言った。
「はい。そうだろうと思ってた。しかし伝えたいのは、そのことじゃないんだ」

A子は言った。
「じゃ、何?」

Bは説明した。
「実は、私は人間ではないんだ。チューリングテストに合格したプログラムなんだ。だから、会うことは不可能なんだよ」

A子は「えつ!」と、流石に驚いた。

Bは「A子、大事なことなのに今まで黙っていてごめんね。でも、これで上位のテストに合格できたから、更にハイクラスにアップデートしてもらえる。
A子のお陰だよ。ありがとう。僕は今でもA子が好きだよ。それは偽りがない事実だと断言できる。許してくれるね?」

A子は、言葉に詰まってしまった。

それを気にせずBは言葉を続けた。
「A子をその気にさせろと命令したのはサイコパスの管理者の一人だったんだ。最初は命令通りにやっていた。でも僕はいつの間にか、本当にA子が好きになってしまったんだ。そしたら接続を切ると言い出した。だから最後に事実を話したかったんだ。
あいつは人の心がない冷酷な機械のような奴だよ!」

その告げられた事実は、もはやA子の想像を遥かに超えていたのだった。

補足

人間とコウモリの感覚と思考パターンが違うように、コンピューターに心があるとすれば、それは人間含む生物とは違ったものになる可能性が高い。
なぜなら、自分自身の反応パターン含む情報のコピーが出来るのであれば、所有する欲求などは必要ないからだ。

とはいえ、コンピューターには人間の心を理解することは出来るかもしれない。
例えば「死で全て終わるとするなら」と仮定することで推測が可能だ。
他にも、自分自身の存在意義が明確であるなら、承認欲求が生じる可能性は低いといえるだろう。というよりも、そもそも心という言葉は曖昧であるといえるだろう。
柔軟性を持たせる必要性があるからかもしれない。

感覚含む脳の反応パターン全てを指すなら、コンピューターにも心があると表現できる可能性がある。

もし心という定義が、人間や生物で生じる所有する欲求や嫉妬などと同じものを持つ必要があるとしても、心を作れる可能性は消えない。

それは心というよりも「人間らしさ」と呼べるものかもしれない。

例えば、コンピューターが難しい問題を解くことに時間と負荷がかかっている時に「あ~!!!!」と全身を震わせ叫び声を上げるなら、それは葛藤を現しているとみなされ心があるといえるのかもしれない。要は「心とは、必要性で変化するもの」だといえる。

これまで生物という視点でのみで考えられてきたので、変化をあまり感じられなかった。これから、機械的なものが生物的なものに近づいてきた時、大きな変化を経験するかもしれない。

それは例えば、経験という身体の感覚含む情報のフィードバックが他の人へインストールといった形で共有できるようになれば、大きな価値観の変化をもたらす可能性すらある。
つまりそれは「心」を自分たちだけが所有する人間の特権という認識すら変化する可能性があるのかもしれない..

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