98.楽観主義

98.楽観主義

子にとって、全てはどうでもよかった。

日夜流れてくるニュースの事はもとより、お金の事も、人間関係の悩みもA子にとっては、どうでもいい些細なことだった。
流行りの服も別に欲しいとは思わないし、隣の家から時折聞こえてくる騒音も、たいして気に留めることもなかった。

A子は思った。
「みんな、それぞれの環境で、一生懸命生きているのよね」

そう思うと、優しい気持ちに包まれた。

A子は楽観主義だった。
どうでもいいと思いつつも、少しでもラッキーなことがあると、とても嬉しい気持ちになれたし、何か問題が起きても大したことに思えなかった。

どうでもいいからと言って、やる気がなくなったわけではなかった。
実際はまるで逆で、後悔しないよう、本当に自分がしたいことに没頭することにしていた。

A子は、以前はこんな考え方ではなかった。
普通の人のように悩み、苦しみ、ちょっとしたことを気にして腹を立て、欲しいものであふれかえっていた。

それが今や、カツ丼を食べただけでも涙が出てくるほど感動できるようになっていた。

いつからこのような考え方になったのか?
A子は思い起こしていた。

それは、忘れもしない、今から一年前の事だった。
医者から余命を宣告された、その時からだったのだ。

A子は余命半年と言われ、それを過ぎて、今生きているだけで幸せだった。

そんなある日の事。
A子は専門医の口から出た驚くべき事実を耳にすることになる。
「信じられません。全て跡形もなく、消えています」

A子は開いた口が塞がらなかった。
なんでも、前向きで楽観的に考えられるようになり、ストレスが激減したのが原因かもしれないとのことだった。

A子は生かされたことに、これまで以上に感謝の気持ちを持って生きていくことにしたのだった。

それから、十年後..

A子は、あの事がまるでなかったかのように、些細な事で腹を立て文句を言っていた。

A子は思った。
「あの日の事を忘れたわけじゃない。なのに、なぜ元に戻ってしまったのかしら?」

A子は気になったので、少し心理学の事を調べてみた。
するとどうやら、快楽適応によるものらしいことが分かった。

これはどんな幸福感を得ても、次第に慣れていき鈍感になってしまうという心理現象だった。

A子は言った。
「原因が分かってよかったわ。文句が出るのも生きてる証拠よね。
さて、あの女にだけは負けたくないから、ストレス解消にショッピングに行かなくちゃ」

補足

人は、発達した脳が悩みで機能しなくならないよう、都合のいい解釈が出来るようになっているのかもしれない。それが愚かな行為だと認めることは、簡単ではないといえるだろう。
向き合わない方が楽に生きていけるからだ。

人は誰しも、どこかで妥協することで、裸の王様の側面を持って生きていかなければならないのだろうか。なぜなら、向き合うことで耐えられなくなり死んでしまっては元も子もないからだ。
とはいえ、それが原因で問題が膨れ上がることが多いのも事実だが..
※当ブログで取り扱う物語はフィクションです。実在の人物、団体、事件などとは一切関係ありません。

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