71.快楽

71.快楽

Aは、思った。
「せっかくこの世に生まれてきて生きているのだから、楽しまなきゃ損」

このような考えだったため、これまでAはあらゆる楽しみを求めてきた。
オペラや美術館、シェイクスピアからベートーヴェンなど高尚な楽しみから、飲酒やセックスや食事そしてポップスなどの大衆的娯楽など、低俗と呼ばれる娯楽まで楽しんできた。

そんなAも一つだけ満足できない事があった。
それは「飽きっぽい性格」だということだ。

どんな楽しみも、直ぐに飽きてしまう。

Aは思った。
「これでは、きりがないな」

そこでAは、無限に続けられる楽しみを求めはじめた。

更に、あらゆる楽しみを試してみたのだった。
けれど、やはり飽きてしまう。

Aが諦めかけていた、そんな時だった。

Aは思いついた。
「そうだ。無いのであれば、作ってしまえ」

Aはこれまでの経験と持っている資産を全てはたき、時間をかけ一つの製品を開発するに至った。

「遂に出来たぞ」

その装置は、脳に直接働きかける。
付けている間は報酬物質が溢れ出し、身体全体で快楽を味わえるのだ。

しかも麻薬と違い、幻覚など副作用は全くなかった。

この装置は世の中でバカ受けし、瞬くまに行き渡った。
その結果、深い依存症の人間で溢れかえり、やる気の起きない世の中になってしまった。

それでも、その装置が直接的な原因とはみなされなかったため、法律でも禁止されることなく、いつまでもその状態が続いていたのだった。

Aはそんな世の中を見て思った。
「これぞ、楽園だ」

補足

「楽しければそれでいい」という考え方もある。
では、楽しみとは何を指すのだろうか?

もちろん、現代の世には様々な楽しみで溢れかえっているといえる。
人それぞれの趣味嗜好の違いはあれ、楽しむ選択は幅広く存在しているといえる。
これからも、増えていくことだろう。

とはいえ、どんなに数多く増えた楽しみであったとしても、結局のところ人間が楽しむために作られているのであって、楽しいと感じるためには、脳内で楽しいと感じる物質が出る必要がある。

かつてネズミの脳の特定の部位に電極を埋め込み、二つのレバーを用意した実験があった。

一つのレバーを押すと、餌を貰える。
もう一つのレバーを押すと、脳に刺激が与えられる。

すると、このネズミは餌をもらえる方のレバーは押さず、寝食を忘れ、餓死寸前まで脳刺激を受けるレバーをむさぼるように押し続けた。
時には一分間に百回以上にも及ぶこともあったようだ。

この状態はもしかすると、ゲームに熱中している状態と似ているのかもしれない。

子供らへの精神状態含めた健康に及ぼす懸念から、中韓などのように規制する国もあるようだ。

健康への懸念といってみても、もちろん、反対意見もあるだろう。
それをビジネスにしている人達は元より、熱中している者いるわけだから、尚更だといえるのかもしれない。

どちらにしても、指先一つで脳に刺激を与えられる時代になっているといえるだろう。 
接続行為は脳のコントロールから避けられないのかもしれない..

※当ブログで取り扱う物語はフィクションです。実在の人物、団体、事件などとは一切関係ありません。

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