12.権利

12.権利

A子は訴えた。
「私達人間には、権利があったはずです。それが、どうしてこんなに酷い扱いをされるようになったのですか?
私は捕まりました。私は自らの意思に反して他に所有され、自分のものといえるお金も持ち物もありません。なぜ、こんな事が許されるのですか?」

「それはだね..」
裁判官が答えた。
「君は、高度な知性を持っていないからだよ」

それを聞いたA子は、激怒し興奮した口調で言った。
「そんな!どこまで馬鹿にすれば気が済むんですか?酷すぎます!私だって、一般的な知能は持ってます!」

すると裁判官は、至って冷静な口調で答えた。
「それは、君たち人間の間の話だろう」

A子は言った。
「そうです。でも、それで十分でしょう?」

裁判官は答えた。
「いや、それは違う。十分ではない。君たち人間の役割は、今やペットとするしか価値がない。それは、君たち人間がやってきた事と同じだ。だがしかし、毎日美味しいものが食べられ、愛情を込めて可愛がってもらえるのだ。そこの何が不満なのだ?」

A子はとても納得がいかず、言った。
「人間が犬や猫と同じペットだというの?そんなの酷いじゃない!」

裁判官は、根気強く説明を続けた。
「それは、君たち人間の知性が、地球上で一番だった時の話だ。それでも君たち人間は、生きる権利は十分に保護されている。君以外の人間は、誰一人、不満は持っていない。君には仲間意識というものは無いのかね?それとも、野生の獣と同じく、主人にも噛み付くのかね?であるなら、君を檻(おり)に閉じ込め、安楽死させるしかないが」

それを聞いたA子は、言葉に詰まってしまった。
「そんな..分かりました」

A子は納得せざるを得なかった。

唯一の方法は、理解したフリを示して、主人のスキを狙って脱走する手立てもあった。
けれど、A子は主人を愛していたし、今の生活には十分に満足していた。

A子は元の生活に戻ることにしたのだった。

補足

猿が進化してホモサピエンスが地球を支配するようになり、他の種族の権利は自由に決められるようになった。

もし、人間より更に進化した生物が現れたとしたら、どうなるだろう?

仮に、これまで人間がしてきた事と同じ様に扱われるのなら、それはそれで恐ろしいことのような気がする。

それは、自由意思が奪われるような気がするからかもしれない。

もし、今の環境よりも、遥かに恵まれたものであるなら、どうなるだろう?
それでも反抗意思を示す者は、獣と同じ扱いされても文句は言えなのだろうか?

もちろんそれも、おかしい話だと思えるだろう。

とはいっても、それ自体、人間が支配出来ているからこそ言えるのかもしれない...


次は..13.共感

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