77.信頼


77.信頼

男は、年中お金に困っていた。
どんぶり勘定で、努力すればするほどマイナスになり、お金のやりくりで常に苦労していた。

A男はお金の事でこれ以上悩みたくないと、心底思っていた。

そんなある日の事。
A男の元に、差出人不明の小包が届いた。

A男は訝(いぶか)しげに小包を開けてみた。
するとそこには、小さな装置が入っており、一言メモが添えてあった。
「誰も傷つかず大金が入る装置-使い方はボタンを押すだけ」

それを読んだA男は、何かのイタズラかとせせら笑った。
そう思っても、好奇心を抑えられなかった。

A男は思った。
「これを押すと、どこかに繋がっていて、誰かが笑っているのだろう。
ま、それでも構わないさ。まさか爆弾ではないだろう」

そう思いながら、A男は恐る恐るボタンを押した。

押した後も、別に何も変わったような事は起きなかった。
A男は「やはり、思ったとおりだ。バカにしやがって」と、その装置をゴミ箱に捨てようとした。

すると、先程読んだメモの裏に何か書いてあるのが目についた。
「このボタンを押すと、一年に一度だけ全ての人から一円だけなくなり、その分あなたの口座に入金されます。期間は十年間」

A男は「まさか」と思いながら、スマホで口座の残高を確認してみた。
すると何と、七十八億一五一四万七七三五円が入っているではないか。

振込名義人の名前は、英語で記載されており、聞いたこともない名前だった。
A男は「夢じゃないよな」と思いつつも、何とか冷静さを取り戻した。
「なるほど。確かに年に一円程度だったら、どんな人間でも、知らない内になくなっていることも有り得るだろうし、確かに誰も傷つかないな」

A男はその後、その金でこれまで苦しめられてきた一千万ほどの借金を清算した。
その後、これまで欲しかったものを購入した。
そして、お世話になった人のリストを作り、お礼をしたのだった。

それでも、預金の数字は殆ど変わったようにみえなかった。
「これが毎年入ってくるのか。とても使いきれないな」

A男は、気持ちに余裕が出てきた。
そこで、その金の使い道を考えてみることにした。
A男は「ここまで必要ないな。一億もあれば十分だ」と思った。
そして、残りを全て自分と同じ様に頑張ってもそれに見合った生活を送れない、そんな報われない人達へ与えようと思った。

そう考えても、A男は心当たりがなかった。
「いっその事、寄付してしまおうか」とも考えた。
それでも、その寄付がどのように使われているかが気になった。

そんな事を考えていたある日のこと、偶然目にしたデータがあった。
それは日本の七人に一人の子どもが、貧困状態に陥っているという厚生労働省の報告書だった。

A男はこれには衝撃を受けた。
「経済大国だといわれている日本で、本当にこのような事が起きているのか?」
そしてA男は、貧困が連鎖しスパイラルに陥る危険性があることや、子供の心理状態として「なんで僕だけ」から「どうせ僕なんて」とあきらめの感情を持ってしまい、支援団体とつながることすら困難になっていることも知った。

A男は思った。
「そのような子供を、率先して支援しくことに使おう」

それから、三十年後..

A男の支援は実を結び、それは日本だけでなく世界中に広がっていった。
既に二十年前からA男には装置の効果は切れていたので、入金はされていなかった。

A男がお金にルーズなのは相変わらずだった。
それでもA男は裕福に暮らしていた。
そしてそれはA男だけではなかった。

なぜならその頃には、世界中の豊かさが底上げされていたからだった。

補足

誰も傷つかないのであれば、何をやっても許されるのだろうか?
許されるのかもしれない。
それが裏切りであったとしても、その裏切りには浅い深いはあるのかだろうか?
無いとすれば、何をやっても許されるということになるだろう。
仮にあるとすれば「自分さえよければいい」といった自己中心的な考えは、結果として誰かを傷つけてしまうことになってしまうのかもしれない。

これと似たようなことがお金の流れでも起こりうる。
例えば、入ってきたお金が正当なお金だとしても、それを何に使おうが勝手なのだから、誰も傷つかないといえるだろう。
企業が利益だけを追い求めていった結果、それが誰も傷つけないとしても、それは最も大事な関係の、一番大切な深い部分を、台無しにしてしまうこともあるのかもしれない。
もちろんその事に気がつく人がいればの話だが..

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